鎧なき騎士

1937年作品
監督 ジャック・フェデー 出演 マレーネ・ディートリッヒ、ロバート・ドーナット
(あらすじ)
英国人のフォザギル(ロバート・ドーナット)は、諜報部の命令によりロシア人のウラノフになりすまして革命運動に参加。一時、シベリア送りとなるものの、ロシア革命が成功したことにより革命会議長の片腕として復帰する。ある日、彼は伯爵未亡人アレクサンドラ(マレーネ・ディートリッヒ)を取調べのためペトログラードに護送することを命じられるが….


ジャック・フェデーがイギリスに招かれて撮った作品。

偽ウラノフはマレーネ・ディートリッヒ扮するアレクサンドラに一目惚れしてしまい、ここからは彼女を革命政府の手から救い出すため、二人による必死の逃亡劇が繰り広げられる訳であるが、残念なことにこれが御都合主義の連続でスリルやサスペンスの欠片さえ感じられない。

また、冒頭でフォザギルが英国諜報部のスパイになる過程が丁寧に説明されているにもかかわらず、この設定がほとんど生かされていないのも大きな減点材料。まあ、強いて言えば偽ウラノフの“機転の速さ”みたいなところにそれらしき雰囲気を感じ取れない訳でもないけど、彼の具体的なスパイ活動が全く描かれていないというのはやはり拙いのではないか。

そのため、本作の魅力は主演のマレーネ・ディートリッヒの容姿を楽しむという一点に限られてしまう訳であるが、確かに公開当時36歳という彼女は十分に美人であり、偽ウラノフが彼女に一目惚れしてしまうという設定にも説得力がある。しかし、革命によって崩壊してしまう貴族階級の悲哀を表現するのに彼女が適任だったかというと、正直、少々疑問が残る。

ということで、ロシア革命という折角の背景も十分に生かされているとは言えず、101分という上映時間がちょっと長く感じられてしまった。ディートリッヒの魅力を惹き出すということでのジャック・フェデーの起用だったのかも知れないけれど、ここは順当にヒッチコックあたりに任せておけば、小気味良いサスペンス映画になっていたかもしれません。