死の谷

1949年作品
監督 ラオール・ウォルシュ 出演 ジョエル・マクリー、ヴァージニア・メイヨ
(あらすじ)
留置所を脱走したウェス・マックイーン(ジョエル・マクリー)は、助けてくれた仲間の指示で廃墟と化した街トドス・サントスへとやってくる。そこでは彼と一緒に列車強盗を行うことになっているならず者の二人組と、インディアンとの混血娘コロラド(ヴァージニア・メイヨ)の三人だけが彼の来るのを待っていた….


ジョエル・マクリー主演の西部劇をもう一本。

彼の扮するウェス・マックイーンは、外見上、どこから見ても絵にかいたような“良い人”であり、あばずれ女のコロラドだけでなく、トドス・サントスへ向かう途中で知り合った都会育ちの娘ジュリー・アン(=ウェスの死んだ恋人に面影が似ているらしい。)からも好意を寄せられる。

したがって、俺としては、いつウェスが悪党仲間を裏切って列車強盗を未然に防ぎ、ジュリー・アンと結ばれるのかっていうところに注目して本作を見ていた訳であるが、なんとウェスは最後の最後まで悪人のまんまであり、ラストではまるでコロラドと心中するような形で保安官等の放った銃弾に倒れるという衝撃の結末!

いや〜、このへんが脚本と配役の妙といったところなんだろうけど、ジョエル・マクリーという俳優にこういう使い方があったんだなあと、ちょっと感心してしまった。端役なんだろうと思っていた保安官が実は意外に有能であり、逃亡を図ろうとしたウェスを着々と追い詰めていくという展開もとても面白い。

そして、さらに素晴しいのが本作におけるヴァージニア・メイヨの熱演ぶりであろう。インディアンとの混血という設定のため、肌をちょっと浅黒くメイキャップしているんだけれど、そのせいで彼女のちょっと斜視がかった眼差しが一段と印象的になっており、コロラドという女性の激しさと哀しさを雄弁に物語っている。物語後半の盛り上がりは、彼女抜きでは到底考えられません。

ということで、後から調べたところによると、本作は同じラオール・ウォルシュ監督によるギャング映画「ハイ・シエラ(1941年)」を西部劇向けにリメイクした作品らしい。主演がハンフリー・ボガートということで、ジョエル・マクリーとは随分イメージが異なるように思われるのだが、次はそちらの作品も見てみることにしましょう。