地の果てを行く

1935年作品
監督 ジュリアン・デュヴィヴィエ 出演 アナベラ、ジャン・ギャバン
(あらすじ)
殺人を犯したピエール・ジリエト(ジャン・ギャバン)は、パリを逃れてバルセロナへとやってくるが、そこで有り金や旅券を盗まれ無一文になってしまう。自分の逮捕に多額の懸賞金が懸けられたことを知ったピエールは、止む無くスペイン領モロッコ外人部隊に入るが、彼と一緒に入隊したフェルナンド・リュカの素行に疑念を抱く….


以前から見てみたかったデュヴィヴィエの初期監督作品。

フェルナンドの正体が実は自分を追ってきた密偵ではないかと疑うピエールは、彼から逃れるためにさらに奥地へと転属し、そこで出会った美しい現地人の娘アイシャ(アナベラ)と恋に落ちる。一度は彼女との新生活を夢に見たピエールであったが、やがて司直の手から逃げ切れないことを悟り、仲間たちとともに決死の任務に志願する。

故郷であるフランスから逃れるため、異国の女性との新しい生活を夢見るというピエールの設定は、名作「望郷(1937年)」の主人公であるペペ・ル・モコとちょうどネガ・ポジの関係。しかも、結局、願いが叶えられないままに命を落とすというラストは両作に共通しており、本作が「望郷」にどんな影響を与えたのか、ちょっと興味があるところ。

クレジットの最初に名前が出てくるにもかかわらず、アナベラの出番がちょっと少ないせいもあって、デュヴィヴィエ作品に特有の“芳醇さ”みたいなものはやや希薄であったが、その分、荒涼たる風景をバックに外人部隊という特殊な状況下における男たちの葛藤が描かれており、意外にもハードボイルドな雰囲気を楽しむことができた。

本作が出世作になったという主演のジャン・ギャバンは公開当時31歳で、さすがに若い。決して二枚目ではないし、スタイルも良くないんだけど、女性にモテモテという設定が不自然にならないのは、やっぱり彼が魅力的ということになるんだろう。男気のある外人部隊の隊長さんをはじめ、共演者の方々もそれぞれにカッコいいところを見せてくれる。

ということで、ストーリー的にはややまとまりに欠けるきらいがあり、名作と言い切るのにはちょっと気が引けなくもないが、オープニングからラストに至るまで印象に残るシーンも多く、この作品の醸し出すムードはやっぱり一級品。久しぶりに他のデュヴィヴィエ作品も見直してみたくなりました。