蜘蛛巣城

1957年作品
監督 黒澤明 出演 三船敏郎山田五十鈴
(あらすじ)
一の砦の大将である鷲津武時(三船敏郎)は、主君の都築国春に謀反を企てた藤巻勢を見事撃破し大手柄を上げる。国春に召された武時は二の砦の三木義明と一緒に蜘蛛巣城へと向かうが、その途中、蜘蛛手の森で物の怪を目撃し、「やがて蜘蛛巣城の城主になる」という予言を受ける。その話を武時から聞いた妻の浅茅(山田五十鈴)は….


今まで見逃していた黒澤作品を見る特集の第4弾。シェークスピアの「マクベス」の翻案ということで見る前から話の大筋が予想できてしまうため、これまでいま一つ食指が動かなかった。

この後、武時は浅茅の口車に乗せられて主君の国春を謀殺し、予言どおり蜘蛛巣城の城主に納まるものの、悲劇はそれに止まらず、わが身の保身のために友人の三木義明まで殺してしまう。まあ、このへんのストーリー展開は正に「マクベス」なんだけど、小国英雄橋本忍等と組んで手掛けた脚本と黒澤自身の演出によって、これが見事な時代劇へと生まれ変わっている。

鷲津武時に扮した三船敏郎は、豪胆さとその内に秘められた弱さとを併せ持つキャラクターを迫力十分に演じており、その演技のダイナミックさと時代劇ならではの静的な様式美との対比がとても面白い。ラストの有名な矢ぶすまのシーンは、どうやって撮ったのかは知らないけれど、現在のCGではとても表現できない程の迫力だった。

そして、そんな武時の性格を鋭く見抜き、彼を見事に操る妻の浅茅がこれまた絶品。原作のマクベス夫人のキャラそのままでは時代劇の雰囲気にそぐわなかっただろうし、それをこのような内助の功型に変更したことも大正解で、その期待に見事応えた山田五十鈴も流石だった。

ということで、蜘蛛巣城の外観のセットをはじめ、ところどころに“予算不足?”という現実が垣間見えてしまうところがちょっと悲しかったが、それでも黒澤映画はやっぱり面白い。この特集ももう少し続けてみることにしよう。