鉄コン筋クリート

2006年作品
監督 マイケル・アイリス
(あらすじ)
宝町を縄張りにする不良少年のクロとシロは、ヤクザからも一目置かれる程の存在。そんな宝町に“子供の城”建設プロジェクトの話が持ち上がり、その推進責任者として“蛇”が送り込まれてくる。クロとシロは自分たちの街を守ろうと立ち上がるが、蛇配下の3人の刺客の驚異的なパワーの前にさすがの彼等も苦戦を強いられる….


松本大洋の漫画のアニメ化。ただし、俺はこっちの漫画は読んだことはない。

作品の舞台になる宝町は、大阪あたりのちょっとヤバそうな歓楽街とどこかの中華街とが一緒になったような架空の街であり、猥雑でレトロっぽい印象がなかなか魅力的。おそらく、この街の建物は今や貴重となった鉄コン筋クリートで建てられている筈であり、その破壊を目的とする再開発計画をクロとシロが阻止しようとする気持ちは、直観的に理解できる。

そんな彼等が、その特異な身体能力を駆使して宝町の中を飛び回る様を本作は見事に映像化しており、なんといってもこの点が本作の最大の見どころ。アニメ製作を担当したSTUDIO4℃の作品を見るのはこれが初めてだったけど、この会社の名前は覚えておいた方が良さそうです。

一方、ストーリーのほうは結構ありがちな展開ではあるものの、主役の二人から脇役に至るまで登場人物に興味深いキャラクターを揃えているため、何とか救われている。まあ、長編漫画を大幅に圧縮してアニメ化しているので止むを得ないのかもしれないけれど、個人的にはクロとシロの日常生活をもう少しのんびりした雰囲気の中で見てみたかった。

また、最近の流行りということで、本作でも声優陣に多くの人気俳優を取りそろえているが、中でもシロ役の蒼井優の達者なことにはちょっと驚いた。俺は決して彼女の熱心なファンという訳ではないが、お目にかかった作品を思い返してみても常にどこかで光るところを見せてくれており、案外演技力のしっかりした女優さんなのかもしれない。

ということで、本作にも不満な点が無いではないが、同時期に公開されたマッドハウスの「パプリカ(2006年)」と比べてみると俺はこっちの方が断然好み。やっぱり、アニメは動きが命だね。