犯罪王リコ

1930年作品
監督 マーヴィン・ルロイ 出演 エドワード・G・ロビンソンダグラス・フェアバンクスJr.
(あらすじ)
チンピラヤクザのリコ・バンデロ(エドワード・G・ロビンソン)は暗黒界の大物になる望みを抱いて、親友のジョー・マッサラ(ダグラス・フェアバンクスJr.)と一緒に大都会へやって来た。リコはヴィットリーというボスの手下になり、持ち前の激しい気性で次第に頭角を現していくが、一流のダンサーになる夢を捨てきれないジョーは、ギャングの世界から足を洗うことの難しさに苦悩する....


往年のギャング・スターエドワード・G・ロビンソン出世作

彼の演じるリコという青年は直情径行を絵にかいたような人物であり、ちょっとしたことですぐ拳銃に手をかけるし、遂には大勢の人がいる前で市警の捜査主任を射殺してしまう。まあ、正直言ってこんな人間が周りにいたら物騒なだけであり、本来、慎重派であったボスのヴィットリーも彼を子分にしなければもっと長生きが出来たことと思う。

ストーリーの方もそんなリコの性格みたいに直線的であり、彼は大ボスの“ビッグ・ボーイ”に認められるところまで出世する(=とはいっても、“犯罪王”というのはちょっと持ち上げすぎ!)んだけど、その後、ジョーのダンスパートナー兼恋人オルガの密告により一転して破滅への道を辿るという、まあ、上がって下がるだけの単純な構造。

しかし、そんな作品を支えているのが主演のエドワード・G・ロビンソンの魅力であり、公開当時30代後半の彼は正に元気一杯。まだそんなに太ってはいないものの、ひとにらみで小心なヴィットリーをビビらせるあたりの貫禄は流石というところです。ただし、その反面、彼の人間的な魅力みたいなものがあまり描かれておらず、観客が彼に感情移入しづらくなっている点がちょっと残念かなあ。

ということで、当時(=有名な聖バレンタインデーの虐殺の翌年)の教育的配慮からリコをあくまでも悪役として描こうというのが製作者側の意図だったのかも知れないが、そのせいで内容的に深みのない作品になってしまったのも事実。まあ、(比較的)若き日のエドワード・G・ロビンソンの顔が拝めるだけでも、一見の価値はあるけどね。