稲妻

1952年作品
監督 成瀬巳喜男 出演 高峰秀子、三浦光子
(あらすじ)
バスガイドの清子(高峰秀子)には母親と全員父親の異なる3人の姉兄がいるが、その中で一番仲の良い次姉の光子(三浦光子)の夫が急死してしまう。しかし、光子の夫に妾がいたことや姉兄たちが彼女の受け取る保険金に目を付けていることを知り、何ともいたたまれない気持ちになった清子は一人で家を出ていってしまう….


子供の頃に「二十四の瞳(1954年)」の大石先生役に感動して以来、自分では高峰秀子のファンだと思っているんだけど、正直なところ、他の作品に出ている彼女を見て魅力的だと思った記憶はあまりない。

一つには、大石先生のイメージが強過ぎるっていうこともあるんだろうが、まあ、そんなこともあってか、成瀬の代表作といわれる「浮雲(1955年)」のヒロイン役では哀れさより愚かさのほうが気になってしまい、また、この前見た「流れる(1956年)」の娘役にしても世を拗ねているだけの後ろ向きの印象が強くてあまり好きになれなかった。

そんな訳で、今回、試しに彼女が「二十四の瞳」よりも前に出演した作品を見てみようということで選んだのがこの作品。公開当時、彼女は28歳でそんなに若くはないんだけど、この作品で彼女が演じる清子役の設定は20代前半ってところかな。

その清子も複雑な家庭環境や色んな意味でだらしのない母親に対して不満を抱いている訳であるが、今回は拗ねているだけじゃなくて、そんな家族を見捨てさっさと一人で家を出ていってしまう。このあたりはやっぱり若さの故かもしれないけれど、見ているこっちもスッキリするね。

まあ、ラストでは清子が母親に不満をブチまけた後、再び和解してパッピーエンドになるんだけれど、成瀬作品にしては珍しく(=俺が知らないだけ?)見終わった後の印象が清々しく、なかなか楽しめる作品に仕立て上げられている。このダメ〜な母親に扮する浦辺粂子のどこか憎めない演技も、作品の雰囲気づくりに大きく貢献しているのだろう。

それと、端役ではあるが後半の方に香川京子が出ている。彼女は高峰秀子より7歳年下なんで、この頃二十歳を過ぎたばかり。「東京物語(1953年)」に出演する前年になる訳だけど、本当にお綺麗で清子が憧れる清楚な娘さん役に正にピッタリでした。