李歐

レディ・ジョーカー」を読む前に合田シリーズ以外の高村作品も読んでおくか、ということで本書を購入。

最初は、“また、性格破綻者の話かあ”って思いながら読んでいたんだけど、スーパースター李歐が登場するあたりからちょっと作品のイメージが変わってくる。作品の主人公は一彰君の方なんで、彼の出番は決して多くはないんだけど、登場するとその場の雰囲気を全部持っていってしまうのは「第三の男」のハリー・ライムみたい。キャラ的には吉田秋生の漫画に出てくるヒーローを連想させるんだけど、やっぱりあーいうのが女子の究極の憧れなんでしょう。

一方の一彰君は、高村作品のキャラとしては珍しく(?)歳を取るにしたがって性格が丸くなっていくような印象。ラストのほうで彼の妻が殺されても、犯人に対する怒りなんかはあまり感じられず、敵討も李歐に任せっきり。要するに、彼等(=作者)の夢見る大陸での生活において、彼女は所詮邪魔者に過ぎなかったということなんだろうけど、ちょっと可哀そう。

ということで、合田シリーズ以外の高村作品もなかなか面白いことが確認できて一安心。それと、李歐が中国人なんで文化大革命当時の話なんかが出てくるんだけれど、この前に加藤周一の「中国・アメリカ往還」を読んでいたおかげでこの辺りの背景も良く理解できました。やっぱり、勉強は何かと役に立つもんだね。