ローマ人の物語 キリストの勝利

今回は、コンスタンティヌス大帝没後のお話し。

第1章では大帝の次男であるコンスタンティウスが父の遺志を引き継ぎ、キリスト教の一層の普及に努める様が、第2章ではそのような方向性に疑問を抱いたユリアヌスの背教者ぶりが描かれる。で、こうくれば第3章は、当然、二人目の大帝であるテオドシウスになる筈なんだけど、ここで塩野さんが選んだのは司教アンブロシウス。

「キリストの勝利」という題名が示すとおり、これまで良くも悪くも皇帝を中心として描かれてきたローマ帝国の歴史が、遂に皇帝以外の者の目を通して描かれることになってしまった訳である。まあ、そうはいっても、このへんは作者の好みに左右されるところが大きいんで、キリスト教の国教化によりローマ的寛容の精神に止めを刺してしまったテオドシウスのことを塩野さんが認めたくなかったということなんだろう。

まあ、俺自身は無神論者なんで、別にキリスト教のことは好きでも嫌いでもないんだけど、先日、サン・ピエトロ寺院を訪れ、そして今この本を読んでみて思うのは、キリスト教、特にカトリックの“したたかさ”である。今までは、“カトリック=堕落、プロテスタント=純粋”くらいにしか考えていなかったけれど、キリスト教がここまで世界中に広まるためにはカトリック的なしたたかさは必要不可欠だったんだろうし、そこには極めて人間的な魅力があるんだろうと思う。

ということで、長かった「ローマ人の物語」もいよいよ次が最終巻。カート・ヴォネガットの遺作も読まなくちゃならないんだけど、とりあえずこっちを先に済ませることにしよう。