ヨーク軍曹

1941年作品
監督 ハワード・ホークス 出演 ゲイリー・クーパーウォルター・ブレナン
(あらすじ)
テネシーの田舎町に生まれたヨーク(ゲイリー・クーパー)は、町一番の暴れ者。決して悪人ではないが、パイル牧師(ウォルター・ブレナン)等の言葉には一向に耳を貸そうとしない。ところが、ある晩の出来事がきっかけでヨークは信仰に目覚め、それまでの生き方を改めると、周囲の人々もそんな彼を温かく受け入れる。そんなときヨークのもとに召集令状が届くが、彼は戦争と人殺しを禁じた聖書の教えとのギャップに悩む….


引き続きゲイリー・クーパーウォルター・ブレナンの作品を鑑賞。第一次大戦で活躍した実在の人物を描いた伝記的映画なんだけど、こっちは監督が職人ハワード・ホークスということで、なかなか良くできた“お話し”に仕立てられている。

前半は、天衣無縫のヨークの行動がユーモラスに描かれており、演じるゲイリー・クーパーの人柄と相まってとても面白い。ヨークは、彼を騙した男に復讐しに向かう途中、雷に打たれたことがきっかけになって神の存在を確信し、それまでの生活態度を180度改めるんだが、このウソ臭い展開が見ていてつい納得させられてしまうあたりは、流石ハワード・ホークスです。

で、その後、第一次大戦アメリカが参戦し、ここに至って“戦争か、神の教えか”というこの作品のメインテーマがやや唐突に現れるんだが、そこはタカ派として知られたホークス監督、結局、“自由や仲間を守るためには戦争もやむを得ない”みたいな理屈でヨークはヨーロッパ戦線に参加し、そこで大手柄をあげるという筋書き。

この映画が撮影された時期からいって、いわゆる戦意高揚映画の系列に属する作品なんだろうが、その割には押しつけがましくなく、淡々とした調子で描かれているため、ヨーク君の出した結論の良し悪しは別として、まあ、あまり抵抗感はない。ただ、ラストの能天気さはちょっとあんまりで、史実なのかもしれないけど、もう少し抑揚を付けて欲しかった。

ゲイリー・クーパーはとても良い味を出しており、彼の誠実そうな人柄はこの作品の雰囲気づくりに大きく貢献している。一方のウォルター・ブレナンは、「西部の男(1940年)」のときとは一転、ヨークをやさしく見守る牧師役を愛嬌たっぷりに演じていて、いやー、達者なもんですな。