西部の男

1940年作品
監督 ウィリアム・ワイラー 出演 ゲイリー・クーパーウォルター・ブレナン
(あらすじ)
1880年代のテキサスでは農民の入植者が増え、利害の対立する牧場主との小競り合いが絶えなかった。流れ者のコール・ハードン(ゲイリー・クーパー)は、ひょんなことから両者の調停役を務めることになるが、土地の実力者ロイ・ビーン判事(ウォルター・ブレナン)は牧場主側の肩を持つことを止めようとしなかった。そして、ついに悲劇的な事件が….


時代背景については、あの「シェーン(1953年)」と同じ。主役が流れ者で拳銃の名手ってあたりも共通するんだが、こっちの作品では敵役のロイ・ビーン判事が単純な悪党ではないため、勧善懲悪ものというより、彼と主人公との間の“奇妙な友情”を描くっていうのが大きなテーマの一つになっている。

そんな訳で、一応、ラストではお約束の決闘シーンも用意されているんだが、ちょっと歯切れが悪く、このへんの好き嫌いで評価が分かれる作品かもしれない。まあ、俺は「シェーン」のほうが圧倒的に好きだが、この作品も悪くない。特に、収穫寸前のトウモロコシ畑が牧場主側によって焼き払われてしまうシーンは、一部特撮もあるんだろうが、映像的にもかなり衝撃的。そういえば、「シェーン」のほうでも似たようなシチュエーションがあったなあ。

主演のゲイリー・クーパーは相変わらず格好いいが、何といってもロイ・ビーン判事に扮したウォルター・ブレナンが素晴らしい。彼はこの役でアカデミー賞助演男優賞に輝いたそうであるが、それも納得。知的で粗野、ユーモラスで残酷という相反した資質を併せ持つキャラクターづくりは、後のイーライ・ウォラック等々の演技に大きな影響を与えたのではないか。

ちなみに、ロイ・ビーンは歴史上の人物で、「首吊り判事」と異名をとる西武の名物男。女優のリリー・ラングトリーにベタ惚れという設定も史実どおりらしい。