フラガール

2006年作品
監督 李相日 出演 松雪泰子蒼井優
(あらすじ)
昭和40年代の福島県。経営が悪化する一方の炭鉱会社は、常磐ハワイアンセンターへの転身を計画。東京から元SKDの平山まどか(松雪泰子)を招致し、“フラガール”の養成にあたらせる。炭鉱一家の一人娘の谷川紀美子(蒼井優)も友人に誘われて参加するが、炭鉱事業からの撤退を認めようとしない彼女の母親は大反対。親子喧嘩のすえ、紀美子は家を飛び出してしまう….


昨年、ブルーリボン賞日本アカデミー賞等々を総ナメにした作品。俺は南海キャンディーズのシズちゃんが出ていることくらいしか予備知識がなかったので、てっきりコメディだと思って見たのだが、何と実態は実話をもとにした感動物だった。

素人集団がプロのフラダンサーとして成長する過程を描いた作品であるが、鉱山労働の過酷さにプライドを持っているというか、持たされてしまった人々の存在と彼らが会社側の経営方針の転換(=裏切り)に対して抱く怒りや戸惑いといったものが話のベースになっていて、そのへんが単なる青春ものとか、最近流行りの懐古趣味的な作品なんかとかちょっと異なった陰影を与えている。

しかし、まあ、陰惨なイメージになることを嫌ったのだろうが、出来上がった作品では鉱山労働の厳しさに関する直接的な描写は極力抑え、フラガールたちの健闘ぶりのほうに多くの時間を割いているため、雰囲気はいたって明るい。おそらく、このことは興行的には吉と出たのだろうと思うが、当時の状況を知らない人々に紀美子たちの親世代の気持ちが十分伝わったのかは、ちょっと心配。

主演の松雪泰子は線が細くてプロのダンサーにはちょっと見えないものの、酔っぱらったり、男湯に飛び込んだりと、まあ、大健闘といってよいでしょう。蒼井優のダンスは「花とアリス(2004年)」のバレエシーン以来久々にお目にかかったが、これがなかなか大したもので、作品のクライマックスを飾るダンスシーンも堂々たるもの。

ということで、泣かせ方がちょっと強引というか、あまり工夫が見られなかった点と(個人的には)笑える場面が少なかった点がマイナスポイントではあるが、まあ、それなりに楽しい作品でした。ただ、これがキネ旬の邦画部門第1位というのは、なんだか淋しいなあ。