アダム氏とマダム

1949年作品
監督 ジョージ・キューカー 出演 スペンサー・トレイシーキャサリン・ヘップバーン
(あらすじ)
夫の浮気現場を取り押さえた妻が発砲し、夫にケガを負わせるという事件が発生。検事補のアダム・ボナー(スペンサー・トレイシー)がその事件を担当することになるが、彼の妻で弁護士のアマンダ(キャサリン・ヘップバーン)が被告の弁護人を買って出たことから、一躍マスコミも注目する事態に発展。アマンダは、裁判で“被告の行為は男なら許される行為であり、男女平等の立場から被告も無罪にすべき”と主張するのだが….。


今から60年前の作品であるが、面白いだけではなく、当時のアメリカにおける男女平等の実態が窺える、とても興味深い作品だった。

いかにアメリカとはいえ、当時の男女平等というのはまだまだ“建て前”レベルだったらしく、裁判ではその辺の事情を逆手に取ったアマンダの主張が認められるのであるが、その後にちゃんとアダムが仕返しをするエピソード(これが最高!)が用意されており、両者の対決は痛み分けという無難な結論。まあ、あくまでもコメディであり、アダムの言いたかったのは“男なら無罪、女なら有罪”ではなく、“男でも女でも有罪”ということなので、これはこれで良いのでしょう。

スペンサー・トレイシーキャサリン・ヘップバーンは、「女性No.1(1942年)」以降、実に6作目の共演だそうで、二人の息のあった演技はまさに素晴らしいの一言。残念ながら、俺はこの18年後に公開された「招かれざる客(1967年)」でしか二人の共演は見たことがなかったのだが、お互い信頼し合った名優同士が見せる掛け合いの凄さは、まさに見る者を圧倒します。

また、裁判シーンとその夜の家庭でのシーンを交互に見せる脚本も上手く出来ており、法廷におけるアマンダの弁護ぶりがエスカレートするに従い、アダムとの夫婦生活の亀裂が大きくなっていく様子がユーモアたっぷりに描かれている。また、前半のホームパーティの余興で上映された8mmビデオの内容が、きちんとラストのオチに活かされているのには大変感心しました。