殴られる男

1955年作品
監督 マーク・ロブソン 出演 ハンフリー・ボガートロッド・スタイガー
(あらすじ)
失業中の中年スポーツ記者エディ(ハンフリー・ボガート)は、ヤクザまがいのマネージャーのニック(ロッド・スタイガー)から新人ボクサーの売込みの依頼を受ける。ところが、紹介されたボクサーのトロは図体だけはデカいものの、ボクシングの方はサッパリ。他に良い仕事のあてのないエディは、金目当てに渋々その仕事を引き受けるのだが….


ボギーの遺作。

50年以上前の作品であるが、頭の良い者(ボクシングの興行側)が頭の悪い者(ボクサー)を搾取するという図式は、残念ながら極めて現代的。かつて、こういったことは違法だろうが合法だろうが“悪いこと”として(少なくとも表面上は)忌み嫌われていた時代もあったが、その反動もあってか、最近では一般社会でもある程度許容されるようになってきた印象がある。

この作品でも、当然、エディは頭の悪い者の味方になってくれるのだが、それが本当に最後の最後になってからのことで、それまではロッド・スタイガー扮する悪徳マネージャーの手先としてひたすらカッコわるいおじさん役を演じている。
ケイン号の叛乱(1954年)」の艦長役にしても「必死の逃亡者(1955年)」の犯人役にしても、ボギー本人、好んでこういった役を引き受けていたのだと思うが、ファンとしては、せめて遺作となった本作品ではもうちょっと格好いいところを見せて欲しかったなあ。

でも、作品の出来自体は悪くない。特にラストの世界タイトル戦は、エディに人間としてのプライドの大切さを改めて思い出させるという非常に重要なシーンなのだが、その試合におけるファイトシーンはなかなか迫力があり、十分その役目を果たしている。トロ(「動くアルプス」といわれたあのプリモ・カルネラがモデルらしい。)の顔がだんだん腫れあがっていくメークも非常にリアル。

まあ、マーク・ロブソンは「チャンピオン(1949年)」の監督でもあり、そのへんは得意なのかもしれない。次はこっちも観てみよう。