I t

スティーヴン・キングの「2段組で上下巻あわせて1000ページ超」という大長編ホラー小説。

この本が出された1991年当時、彼の作品は翻訳の出たものは全部読んでおり、この作品も出版されると同時に即、購入。
しかし、いつもにも増して饒舌な彼の語り口と、寝転がって読むには著しく不適当な本の重量、そして身辺に頻発する怪異現象(=当時の借家にネズミが出没するようになった!)等の悪条件が重なって読むのを中断。長らく本棚で埃をかぶっていました。

今回、一念発起して再挑戦した訳だが、案の定、途中で何度か悪夢にうなされたものの、“ブログのネタになる”との一心で見事読了。長年の重荷を下ろせたようで、あ〜スッキリした。

“ある目的のために昔の仲間が再集結する”というシチュエーションは、浦沢直樹が「20世紀少年」でも採用しているように、とても魅力的。“怪異現象をそのまま受け入れることが出来る子供のほうが、ある意味、大人よりもしぶとい”という理屈も納得できる。そんなことで、キングとしては相当の思い入れがあった作品なのだろうが、如何せん、この分量は長すぎ。ストーリー展開が遅くて、上巻の後ろの方で中ダレする。映画を観ているような、とても丁寧で細やかな情景描写は彼の持ち味であるが、もう少し不必要な部分を削ぎ落としてくれれば、読むのにこんなに苦労しなかったと思う。

まぁ、文句はこのくらいにしておいて、作品としては十分におもしろい。ビル、リッチ、エディ、ベン、マイク、スタン、それにベヴァリーという7人の少年少女は、それぞれにとても愛おしい。特に、どんな状況下でも軽口が止められないリッチ君と“堅実な夢想家”のベン君が個人的にはお気に入りで、このお二人とは是非ともお友達になりたかったです。紅一点のベヴァリーちゃんは、ちょっと眩しすぎて、実際に会ったら顔がまともに見られないかもね。それと、マイクとスタンはやむを得ない(?)として、エディが死んでしまうのは残念でした。

ラストの“It”との戦いはちょっと観念的すぎだし、“亀”の正体が良く解らなかったのは不満ではあるが、当時のキングの想像力と表現力をもってしても、ここらへんが限界だったのでしょう。確か、この作品はキング自身の手で映画化されていた筈なので、後でDVDを観てみよう。(でも、深夜一人で観るのは怖そうなので、何とか妻と娘を仲間に引き入れなくては….)