名もなき毒

宮部みゆきの最新作。妻が買ったのを読ませてもらった。

彼女の作品を読むのは「ブレイブ・ストリー」に続き2作目という俺がいうのもなんだが、まぁ、想像していたとおりの出来といったところなんだろう。

導入部にシックハウス症候群や土壌汚染の話しを上手く使いながら、いつのまにか人間の心の中に巣くってしまう「名もなき毒」の哀しさを手だれた文章で描いていく。ビックリするようなトリックはないけど、登場人物にはそれなりの魅力があり、何といってもとても読みやすい。途中、毒物混入事件のことを“力なき者の権力”みたいに表現しているので、海外で頻発している自爆テロの方にでも話が展開していくのかとちょっと期待したが、そうではなく無難な方向に話しは落ち着いた。

女性の登場人物が美人揃いというのは、近い将来に予想される“映像化”のことを考えればやむを得ない(というか、男としてはむしろ嬉しい)ということで目を瞑るとして、二人の犯人を含め、すべての登場人物があまりにも理路整然と自分の考えを言語で表現できてしまう状況には、ちょっと違和感を感じた。まぁ、小説なんだからしょうがないのかもしれないが、「渡鬼」じゃあるまいし、現実にはあれだけしゃべれる人間はそうはいないでしょう。

ところで、主人公の杉村君は前にも別の事件に関係したという話しが何回かで出て来るのだが、この作品は何かの続編なのかね。次の作品では、彼が私立探偵役で出てきたりするのかもしれないなぁ。