クラッシュ

2004年作品
監督 ポール・ハギス 出演 ドン・チードルサンドラ・ブロック
(あらすじ)
不良の弟を持つ黒人刑事(ドン・チードル)、エリート地方検事の妻(サンドラ・ブロック)、外見とは違って心優しい鍵職人、差別主義者の白人警官、逆に白人社会に不満を持つ黒人の若者達など、現代のロサンジェルスに生活する人々の犯罪に絡んだ様々なエピソードを通して、他者と心のふれあいを持つことの出来ない人間の孤独な姿を描く....


2005年アカデミー賞で、見事、作品賞、脚本賞編集賞に輝いた作品。

ポール・トーマス・アンダーソン監督の「マグノリア(1999年)」みたいな作りの作品なんだけど、あっちが上演時間3時間超で、かつ、エンディングにかなりの荒技を持ってきたのに対し、こっちは2時間を切る時間内で話しもスッキリとまとめられており、アカデミー賞脚本賞は納得。

で、コメディーとかならこれで良いんだけど、こういうシリアスなテーマの作品をこんなふうに上手にまとめられてしまうと、「良くできたお話」って感じでリアリティが弱まってしまうような気がする。よって、アカデミー賞の作品賞はちょっとキツかったのではないか。

差別主義者の白人警官が黒人女性を命がけで助けるエピソードは、“人間を一面的に判断してはいけないよ”ということで一応理解できるのだけど、逆に彼に批判的な年若な警官に対して(殺人犯にならなくて済んだイラン人のおっちゃんとは大違いの)とても厳しい結末を用意しているのはどういう意図によるものなんだろうか。“そんな薄っぺらな正義感は、現実では通用しないよ”ということなのかもしれないけど、じゃー、彼はどうしたら良かったのかね。

それにしても、黒人大統領誕生の可能性まで噂されるようになった昨今、大都会のロサンジェルスでいまだにこんなあからさまな人種差別が残っているのには、ちょっと驚きました。そんな状況の中に「銃」を投げ入れれば、そりゃぁ犯罪が起きないほうが不思議ってもんだよね。おーっ、コワ。