戦艦バウンティ号の叛乱

1935年米作品
監督 フランク・ロイド 出演 チャールズ・ロートンクラーク・ゲーブル

(あらすじ)
軍艦バウンティ号は、タヒチから「パンの木」の苗木を西インド諸島に運ぶため、母国イギリスを出発した。船長のブライ(チャールズ・ロートン)は、まさに死人に鞭打つような冷酷な男であり、副長のクリスチャン(クラーク・ゲーブル)と次第に対立するようになる。厳しい航海の後たどり着いたタヒチで、クリスチャンは美しい現地の女性と恋に落ち、他の乗組員たちも天国のような一時を過ごすが、苗木の積込みが終了すると、再び西インド諸島へ向けて旅立っていった。そして、その途中、ブライの横暴さに我慢できなくなったクリスチャンたちは、遂に反乱を起こす….


名優ロートンはブライ船長をユーモアやスマートさのかけらもない男として演じており、誰だってヒゲなしゲーブル演じるクリスチャンに肩入れするような仕組みになっている。そして、遂に立ち上がったクリスチャンたちはブライ船長を監禁し、イギリスに戻ってその悪事を白日の下にさらす….のかと思っていたが、さにあらず!
なんと、クリスチャンは反乱に加わらなかった乗組員と一緒にブライを小型ボートで追放し、自分たちはタヒチに引っ返してしまう。えーっ、そっ、それじゃまるで惚れた女に会いたい一心でクリスチャンが任務放棄したみたいじゃないか。しかも、大海の中に取り残されたブライのほうはというと、嵐や飢えもなんのその、見事なリーダーシップを発揮し、数千キロ離れた港まで自力で辿り着いてしまい、この時点でどちらがヒーローなのか激しく混乱。

実は、この話、18世紀のイギリス海軍で起こった史実を基にしており、小説のように話は単純にいかないんだそーだ。本物のブライやクリスチャンは、当然、良い面も悪い面も併せ持った人物だったのであろう。この映画が失敗している原因は、そんな二人を単純な勧善懲悪ものとして簡略化して描こうとした点にあり、両者の人間性をもっと深く掘り下げていけばデビット・リーンばりの傑作になっていたかもしれない。または、逆に史実の方をちょっといじって、豪快な海洋ロマンにする手もあったろうにね。

と、ここまで悪口を書いてきたが、なんと、この作品はおそれおおくも第8回アカデミー賞作品賞を受賞した名作なんだそうで、例によって、俺の見る目がないだけの話なのかもしれない。(でも、「戦艦」は誇大広告でしょ?)