少女は自転車にのって

2012年作品
監督 ハイファ・アル=マンスール 出演 ワアド・ムハンマド、リーム・アブドゥラ
(あらすじ)
サウジアラビアの首都リヤドに住んでいるワジダ(ワアド・ムハンマド)は、今年10歳になるとても活発な女の子。近所の店先に展示されている自転車が欲しくなって母親(リーム・アブドゥラ)にねだってみたが相手にされず、自分で何とかしようにも自転車代の800リヤルを貯めるのは相当難しい。そんなとき、学校で開かれるコーランの暗唱大会の優勝賞金が1000リヤルであることを知った彼女は…


映画館が存在しないというサウジアラビア出身の女性監督が撮った長編デビュー作。

毎度のことで恐縮だが、Wikipediaによると“サウジアラビアにおける女性の人権はイスラーム諸国の中で最低レベルであると広く認識されている”そうであり、女の子が人前で自転車を乗り回すことも、当然、褒められたことではない。ワジダの母親が娘の願いを聞き入れようとしないのには、経済的な理由以外にもそんな社会的背景があるんだね。

残念ながらサウジアラビアの家族制度等に関する知識が乏しいため、ワジダの家庭環境の善し悪しを判断するのは難しいのだが、母親が外で働いていることから考えてみても、せいぜい中の下といったところなのかなあ。少なくとも“良家の子女”では無さそうだし、小銭をせしめるためなら友人を騙すことも厭わないという狡賢さも身に付けている。

そんな訳で、女学校でも問題児として目を付けられていたのだが、そんなワジダが急に“心を入れ替えてコーランの勉強に励みます”なんて言い出すものだから怖〜い校長先生も吃驚仰天。そしてプレステを活用した猛勉強の結果、見事、コンクールで優勝するのだが、不覚にも嬉しさのあまり賞金の使い途をポロッともらしてしまったのが運の尽き、彼女の努力は水泡に帰してしまう。

まあ、ここまででも十分に面白いのだが、本作にはもう一つ、とても感動的なエピソードが用意されており、暗闇の中からワジダの欲しかった自転車が登場するシーンでは、もう号泣必至(?)。爽やかなラストシーンは、同時に、彼女の将来に予想される様々な困難をも表しているのだろうが、是非とも持ち前の狡賢さを駆使して幸せになって欲しいものである。

ということで、奇しくも(?)、現在、サウジアラビアのサルマン国王が来日中なのだが、“長いものには巻かれろ”を旨とする我が国のマスコミはその大富豪ぶりを羨望の目で報道するばかり。まあ、男女平等ランキングが世界111位の我が国があまり大きな顔をする訳にもいかないんでしょうけどねえ。