不屈の男 アンブロークン

2014年作品
監督 アンジェリーナ・ジョリー 出演 ジャック・オコンネル、MIYAVI
(あらすじ)
イタリア系移民の子ルイ・ザンペリーニ(ジャック・オコンネル)は、1936年のベルリン・オリンピックの5000m競走で入賞を果たした陸上の一流選手だったが、第二次世界大戦の勃発により爆撃手として南太平洋の戦場に送られる。ある日、仲間と一緒に行方不明者の捜索に向かった彼は、乗っていたオンボロ飛行機のエンジン・トラブルにより海上に墜落。他の生き残り2人と共に海上を漂流することに…


反日映画として国内で上映中止を求める運動が起きたアンジェリーナ・ジョリーの監督作品。

その後、上映中止運動が下火になった今年の2月になってようやく本邦公開となったらしいのだが、極めて限られた規模での公開であったことに加え、こういう問題にはからきし意気地の無い我が国のマスコミがほとんど黙殺を決め込んだため、正直、公開されたことについては全く気付かなかった。

さて、ストーリーは、47日間に及ぶ洋上での漂流生活とそれに続く日本軍捕虜収容所での捕虜としての暮らしぶりが描かれているのだが、メインテーマはそういった逆境にも耐え抜いた主人公の不屈の精神を称えるというものであり、捕虜虐待というかつて我が国が犯した戦争犯罪を告発しようとする意図はほとんど読み取れない。

要するに、本作で描かれる捕虜の虐待は、漂流生活における飢えや渇きと同様、主人公が堪え忍ぶべき“試練”の一つとして取り上げられている訳であり、さらにはその虐待が組織的というより、もっぱら捕虜収容所長である渡邊睦裕伍長(MIYAVI)の特異な資質に起因するものであるかのように描かれていることもあって、“反日”のイメージは尚更湧いてこない。

まあ、普通の映画として見た場合、前半の漂流生活と後半の収容所生活とが単純に並列的に描かれているため、テンポが単調で変化に乏しく、途中でやや退屈してしまうところもあったが、日本兵役に日本語をきちんと話せる俳優さんを起用してくれているため、違和感なしに見ていられるのが有り難かった。

ということで、仮に我が国が犯した戦争犯罪を告発する映画があったとしても、それが戦争犯罪自体を批判する内容であり、“日本人は残酷な民族である”というような人種差別的な主張が含まれていない限り、問題にするのは大きな間違い。だいたい“反日”や“親日”といったいい加減な言葉を使用すること自体、無責任で恥ずべき行為だと思います。