8月の家族たち

2013年作品
監督 ジョン・ウェルズ 出演 メリル・ストリープジュリア・ロバーツ
(あらすじ)
猛暑にあえぐ8月のオクラホマ。闘病中の老妻バイオレット(ジュリア・ロバーツ)の世話をさせるためにネイティブ・アメリカンのジョナを雇い入れたベバリーは、その直後に謎の失踪を遂げる。知らせを聞いた長女のバーバラ(ジュリア・ロバーツ)は、別居中の夫ビルと反抗期の娘ジーンを連れて実家に駆けつけるが、それから数日後、ベバリーは湖で溺死体となって発見される….


メリル・ストリープジュリア・ロバーツという二大女優の共演が話題になったホームドラマ

彼女ら以外にも、ベバリー役のサム・シェパード、ビル役のユアン・マクレガー、そしてバイオレットの義弟であるチャールズ役のクリス・クーパー等、なかなか豪華な俳優陣が顔を揃えており、人気のベネディクト・カンバーバッチもチャールズの一人息子の役で顔を見せている。

しかし、そんな華やかな出演者の顔ぶれとは正反対にストーリーの方はかなり辛辣であり、口腔がんの痛みを抑える薬の過剰摂取によってハイになっている母バイオレットの毒舌が、父親の葬儀のために集まったバーバラ、カレン、アイビーの三人の娘たちに対して容赦なく浴びせられる。Wikipediaでは本作を“ブラック・コメディ”として紹介していたが、これを笑って見ていられるのは、よほど恵まれた家庭環境に育った人間だけだろう。

結局、三人の娘たちはそれぞれに実家を出て行ってしまい、最後にバイオレットの元に残ってくれたのは、彼女がインディアンと呼んでバカにしていたジョナ一人だけ。まあ、“家族より他人”という結末は「東京物語(1953年)」と同じなのだが、“家族”という幻想から抜け出すことの出来ない我々凡人にとっては、何度教えられてもその度にショックを受けてしまうんだよなあ。

ということで、本作のクライマックスになるのは、あまりの憎まれ口についに堪忍袋の緒が切れてしまったバーバラとバイオレットの取っ組み合いのシーン。ジュリア・ロバーツという強力な共演者を手に入れたメリル・ストリープは、思いのままに見事な暴走ぶりを見せてくれるのだが、如何せんテーマが重すぎるためとても笑って見ていられない。まあ、将来、俺自身がベバリーやバイオレットの立場になれば、また違った見方が出来るのかもしれませんが。