甲斐駒ケ岳

今日は、梅雨の晴れ間を利用して、今年の目標の一つである甲斐駒ケ岳を歩いてきた。

“テント場が整備されている山域ではのんびりテント泊”というのが俺の山歩きの基本ポリシー(?)なのだが、相手が日本三大急登の一つである黒戸尾根とあっては話が別。日帰りの場合、コースタイムは15時間らしいのだが、ネット上の記録によると実際は12時間前後で往復出来そうであり、日の長いこの時期なら俺にでも何とかなりそう。上り6時間、下り5時間に山頂での休憩時間30分を加えた11時間30分の計画を立て、午前4時9分に尾白川渓谷駐車場を出発する。

まず、平坦な道を竹宇駒ケ岳神社に向かい、その隣にある吊り橋を渡ると“十二曲り”と呼ばれる山道が続いている。数日前までカゼ薬を服用していたこともあり、“急がず、休まず”ペースでゆっくり歩いていくが、トレランを含む他の登山客の方々はなかなかのハイペースであり、踵の違和感を調整しようとちょっと立ち止まっただけでも、2、3名の方に追い越されてしまう。

その後も踵の違和感は解消せず、仕方がないので笹の平分岐点(5時36分)のところで靴と靴下を脱いで両足のテーピングのやり直し。この間も数名の方に追い越されるが、これで踵の違和感はなくなり、一層傾斜が増した感のある“八丁登り”と呼ばれる樹林帯の中のルートを黙々と上がっていく。

6時45分に“刃渡り”と呼ばれる岩場を過ぎると、いよいよ黒戸尾根名物の梯子、階段の始まり。しかし、刀利天狗(7時2分)の先は黒戸山を巻くように平坦な道が続いており、やがてずーっと上ってきた道が下りに変わると、ほどなく五合目小屋跡(7時37分)に到着。ここで、今日初めての休憩を取り、自宅に途中経過をメールする。

さて、ここまではまずまず順調だったのだが、鞍部にある屏風小屋跡(7時42分)の先の長い梯子を上ると、ここからは傾斜の増した梯子や鎖場の連続であり、ペースはガクッと落ちる。特に、大量の水(3.5L)や万が一のときのためのビバーク用セット等が入ったザック(=ヴェイパートレイル)の重量が負担となり、梯子等での垂直移動がとても大変。山頂はまだまだ先なのに、こんなスローペースで本当に日帰りピストンが出来るのか、次第に不安になってくる。

ヘロヘロ状態で辿りついた七丈小屋(8時21分)のベンチに腰を掛け、冷静になってこれまでの経過を振り返る。すると、ここまでに要した時間は4時間12分であり、笹の平分岐点でのテーピングに要した時間を考慮すればほぼ予定どおりといって良い。要するに、俺が遅いのではなく、他の皆さんが早いのだということを納得し、自信を取り戻して再び山頂を目指す。

テント場(8時30分)の先からは再び急登が始まり、八合目御来迎場(9時12分)を過ぎると急な岩場や鎖場の連続。写真で見たことのある足型の付いた鎖場(9時24分)を攀じ登り、2本の鉄剣の刺さった大岩(9時44分)の脇を通って、10時15分に駒ケ岳神社本社に着くと、山頂は目の前であり、10時20分、ようやく甲斐駒ケ岳の頂上(2,967m)に立つことが出来た。

山頂は晴れているのだが、周囲に白いガスが発生しているため、残念ながら眺めはほとんどない。ガスの切れ間から、一瞬目の前に格好の良い山が現れたので慌てて写真に収めるが、帰宅してから調べたところ、それが“南アルプスの女王”と呼ばれる仙丈ケ岳の姿だった。

さて、上りに6時間11分かかってしまったため、山頂での休憩時間を切り詰めて、10時37分に再出発。例によって下りは不得意なため、随分長くかかったような気がしたが、実際の所要時間は、5時間の予定をわずかに下回る4時間52分であり、全体でも、ほぼ予定どおりの11時間20分で、無事、黒戸尾根日帰りピストンを達成することが出来た。

八合目御来迎場(11時22分)〜七丈小屋(11時53分)〜五合目小屋跡(12時31分)〜刀利天狗(13時6分)〜刃渡り(13時21分)〜笹の平分岐点(14時11分)〜吊り橋(15時22分)〜駐車場(15時29分)

ということで、この日は荷物が多かったため、いつもの日帰り用のザックではなく、ヴェイパートレイルを担いでいったのだが、これが完全な失敗。ポケットが少ないため、荷物の出し入れは面倒だし、梯子や岩場を前向きに下りるとき大きなザックは何かと邪魔になる。結局、水は2Lで足りたため、次に挑戦するような機会があれば(?)、他の皆さんのように出来るだけ軽装で歩きたいと思います。