ベルベット・ゴールドマイン

1998年作品
監督 トッド・ヘインズ 出演 ユアン・マクレガー、ジョナサン・リス=マイヤーズ
(あらすじ)
1970年代初頭のロンドンで人気を誇っていたグラムロックのスター、ブライアン・スレイド(ジョナサン・リス=マイヤーズ)は、ステージ上での狙撃事件が狂言であったことが発覚し、社会的非難を浴びたまま失踪してしまう。それから10年後、ニューヨークの新聞記者であるアーサーは、編集長からブライアンの追跡調査を指示され、彼の消息を知っていそうな人物への取材を開始する….


架空のグラムロック・スターであるブライアン・スレイドとその人間関係を描いた作品。

ブライアンとアーサー(クリスチャン・ベイル)以外にも、ブライアンの友人兼恋人であるミュージシャンのカート・ワイルド(ユアン・マクレガー)が登場し、もっぱらこの三人を中心にしてストーリーは展開していく。

一応、アーサーによるブライアンの追跡調査というのがメインのテーマになる訳であるが、このアーサー君、10代の頃にブライアンやカートの艶かしい姿態に触発されてバイセクシュアルに目覚めたという暗い(?)過去の持ち主であり、未だに自分がゲイであることに後ろめたさを感じているらしい彼の“自分探し”がもう一つのテーマになっている。

しかし、前者に関しては、“人気絶頂の体制派ロック・スター(?)トミー・ストーンこそが、ブライアンの現在の姿だった!”という相当無理のあるオチで済ませてしまっているあたりを見ても、監督のトッド・ヘインズの狙いが後者の方にあったのは明らかであり、何かを悟ったようなアーサーの哄笑で本作は幕を閉じる。

出演者の方では、カートに扮したユアン・マクレガーのパフォーマンスが圧倒的であり、本来なら第三の存在であるべきカートの出演シーンが大幅に増えてしまっているのも、おそらくそのせいだろう。ブライアン役のジョナサン・リス=マイヤーズも見た目は十分に美しいのだが、歌唱力の点ではちょっと物足りなく、俺が本作にいま一つ乗れなかった大きな原因になっている。

ということで、ストーリーはフィクションということであるが、ブライアンのモデルがデヴィッド・ボウイで、カートの方はイギー・ポップというのは、当時のロック・ファンであれば一目瞭然。本人の同意が得られなかったということで、デヴィッド・ボウイの曲が一曲も使われていないのがとても残念でした。