女だけの都

1935年作品
監督 ジャック・フェデー 出演 フランソワーズ・ロゼー、ジャン・ミュラー
(あらすじ)
17世紀初頭、フランドル地方のボーム市。市民たちは明日に控えた祭りの準備に浮かれていたが、そんなところへスペインの軍隊が一夜駐留する予定との報せが入る。先の戦争の際に受けたスペイン軍による略奪行為の記憶が覚めやらない市長は、一計を案じ、自分が死んだことにして軍隊をやり過ごすよう妻のコルネリア(フランソワーズ・ロゼー)に指示するのだが….


ジャック・フェデー&フランソワーズ・ロゼーのコンビによる三部作のラストを飾る作品。

結局、スペイン軍はボーム市で一夜を過ごすことになってしまい、市長の喪に服することを口実にして家に閉じこもってしまった男たちに代わり、コルネリアをはじめとする女たちがスペイン軍の接待に当たることになる。

まあ、要するに“女の武器”を使ってスペイン軍を篭絡しようとする作戦に出る訳であるが、意外なことに、オリバレス公(ジャン・ミュラ)率いるスペイン兵たちは極めて紳士的な態度で彼女たちに接し、そんな姿に女たちは思わずうっとり。亭主が表に出てこられないのをいいことに、日頃の鬱憤を晴らすべく楽しい一夜を過ごす様子がコメディタッチで描かれている。

ほとんど室内のシーンで占められていた前二作とは打って変わり、本作ではスペインの大軍が街に入ってくる様子を俯瞰して見せるなど、スケールの大きな作品に仕上げられており、「外人部隊(1933年)」を極めて質素に撮ったジャック・フェデーの予想外の(?)力量にまず圧倒させられる。

メインのストーリーは、臆病風に吹かれた男たちを尻目に、女たちが一夜の自由を満喫するという艶笑話なのだが、その合間を利用して、ピーテル・ブリューゲルの次男がレンブラントばりの集団肖像画を描くシーンや、オリバレス公がフォークを使って食事をする様子を女たちが物珍しそうに眺めるシーンなど、当時のフランドル地方の風俗・文化がさりげなく紹介されており、見事な美術セットと相俟って作品に芸術的な奥行きを与えている。

ということで、主演のフランソワーズ・ロゼーが演じるコルネリアは正に貫禄十分。ハンサムなオリバレス公とベッドを共にしたのかは定かではないが、最後でダメ亭主の市長にちゃんと花を持たせてあげているので、まあ、あの後も夫婦生活は円満に推移したものと思われます。