宇宙人ポール

2010年作品
監督 グレッグ・モットーラ 出演 サイモン・ペッグニック・フロスト
(あらすじ)
イギリスからやって来たグレアム(サイモン・ペッグ)とクライヴ(ニック・フロスト)のSFオタクコンビは、サンディエゴで開催された“コミコン”に参加した後、RV車に乗ってアメリカ西部に点在するUFO関連の名所を巡るという聖地巡礼の旅に出る。その途中、彼等の車を猛スピードで追い抜いていった一台の乗用車が事故を起こすが、その車を運転していたのは“ポール”と名乗る宇宙人だった….


サイモン・ペッグニック・フロストのコンビによるSFコメディ。

宇宙人のポールは、60年前に地球に不時着して以来、アメリカ政府の秘密基地に匿われ、そこで科学技術等に関する様々な知識を人類に提供してくれていたのだが、ネタ切れになった途端、解剖される危機に直面。慌てて母星にSOSを送った彼は、助けに来てくれる宇宙船との合流地点を目指して命からがら基地を抜け出したという設定。

まあ、行きがかり上、ポールの逃走を助けることになってしまったグレアムとクライヴは、彼を追う黒服の男たちと命懸けの追いかけっこを繰り広げることになるのだが、このポールという宇宙人、地球でもう60年も暮らしているということで、やたら人間臭くなっているあたりが本作のミソ。SF映画らしい新鮮さや緊張感は皆無であり、下品でオヤジ臭いポールの言動が観客の笑いを誘う。

特に、進化論を否定するキリスト教原理主義者の父親の下で育てられた娘ルースを改宗させようとするエピソードは爆笑ものであり、追い詰められた彼女が必死の形相でアメイジング・グレイスを歌うシーンは最高に可笑しかった。

また、多くの映画のパロディが散りばめられているのも本作の魅力の一つであり、(ポールがスピルバーグ監督に助言を与えたことになっている)「E.T.(1982年)」をはじめ、スター・トレック・シリーズや「エイリアン2(1986年)」といった作品から拝借してきた小ネタが満載。ちなみに、ポールを迎えに来た宇宙船との合流地点は、当然、「未知との遭遇(1977年)」のデビルズ・タワーだった。

ということで、従来のSF映画の醍醐味を逆手に取った愉快な作品なのだが、例によって、作中で使われる“言語ネタ”がほとんど理解できないところがとても残念。キリスト教原理主義の呪縛から開放されたルースがトンチンカンなスラングを連発するシーンにしても、字幕頼りではその可笑しさの半分も実感できません。