ゴヤ

1999年作品
監督 カルロス・サウラ 出演 フランシスコ・ラバル、ダフネ・フェルナンデス
(あらすじ)
かつては一流の宮廷画家としてスペイン国王に仕えていたフランシスコ・デ・ゴヤも、今や80歳を過ぎ、亡命先であるフランスのボルドーで残り少ない最期の時を静かに過ごしていた。彼の身の回りの世話をしてくれるのは、愛人であるレオカディアとの間に生まれた娘のロサリート(ダフネ・フェルナンデス)であり、彼は、まだ年若い彼女を相手に自らの波乱に満ちた半生を物語り始める….


近代絵画の創始者(の一人)といわれるフランシスコ・デ・ゴヤの伝記映画。

死期の迫ったゴヤの回想シーンという形で、彼が宮廷画家を志して以降に起こった様々な出来事が紹介されていくのだが、その中には、46歳で聴力を失ったことによりそれまでの画家としての生き方に転機を迎えたことや、“聾者の家”における「黒い絵」シリーズの制作といった、俺でも知っている有名なエピソードも当然含まれている。

また、当時の権力者であったマヌエル・ゴドイの屋敷において、ゴヤ自身も敬愛していたというディエゴ・ベラスケスの傑作「ラス・メニーナス」と対面するところなんかも描かれており、まあ、それが史実どおりなのかどうかは知らないが、なかなか興味深い名シーンであった。

一方、各エピソードの取上げ方が断片的なため、彼の本国であるスペインの観客ならともかく、勉強不足の俺には見ていて良く分からないエピソードも少なくなく、例えば、アルバ公爵夫人カイエターナとの関係なんかについては、見ていていま一つピンとこなかった。

見終わってから調べたところによると、彼女はゴヤパトロン(兼愛人?)の一人であり、その美貌と知性、財力によって当時の花形的存在だったらしい。また、あの「マハ」のモデルとも言われているらしいのだが、残念ながら、本作で彼女を演じているマリベル・ベルドゥという女優さんからはそれ程の魅力は感じられず、「マハ」とも全然似ていなかったと思う。

ということで、アルバ公爵夫人の死後、彼女のコレクションであった名画の数々をゴドイが横取り(?)するシーンが出てくるのだが、その名画の中には、昨年ロンドンのナショナル・ギャラリーで拝見させて頂いたベラスケスの「鏡のヴィーナス」も含まれており、この作品があの後どのような経緯で英国に渡ったのか、ちょっと気になりました。