モールス

2010年作品
監督 マット・リーヴス 出演 コディ・スミット=マクフィー、クロエ・グレース・モレッツ
(あらすじ)
1980年代のニューメキシコ州ロスアラモス。12歳の少年オーウェン(コディ・スミット=マクフィー)が母親と二人で暮らしているアパートの隣の部屋に、ある夜、アビー(クロエ・グレース・モレッツ)という少女が父親と一緒に引っ越してくる。学校で同級生のイジメに遭い、孤独な日々を送っていたオーウェンは、冬だというのに裸足のままのアビーに好意を抱くが、町ではその頃からおぞましい連続殺人事件が….


スウェーデン映画「僕のエリ 200歳の少女(2008年)」のハリウッド版リメイク。

細かなエピソードが追加されたり、削られたりはしているのだが、基本的なストーリーはオリジナル版とほぼ一緒。吸血鬼役が「キック・アス(2010年)」のクロエ・グレース・モレッツということもあって、ラストの屋内プールでの惨劇がどのように描かれているのか、興味津々で見ていたのだが、そちらもオリジナル版とほとんど同じだった。

映画的な出来からいえば、本作も水準作以上の作品に仕上がっており、オリジナル版に忠実な脚本・演出を採用したことは正しい選択だったと言えるのだろうが、その一方で、ここまで両者の内容が似通ってくると、そもそもリメイク版を制作する必要があったのだろうかと疑問に思ってしまうのもやむを得ないところ。

まあ、そこはハリウッド映画ということで、リメイク版のほうがストーリーの流れは自然であり、輪郭のハッキリした分かり易い作品になっているが、その差は僅かであり、二番煎じのハンデを完全に克服するまでには至っていない。逆にオリジナル版にあった、素朴で少々荒削りな魅力が失せてしまっているのはちょっと残念ですらあった。

お目当てのクロエ・グレース・モレッツは、「キック・アス」のときとは全く異なる抑制の効いた演技を披露していて決して悪くないのだが、オリジナル版に比べてちょっと美少女度が過剰気味。“女の子じゃない”というセリフは残っているものの、その言葉の持つ二重の意味に気付く観客はほぼ皆無だろう。

ということで、オリジナル版と比べてどちらが良いかと問われれば、やはり最初に見たときの印象というのは重く、個人的にはオリジナル版の方に軍配を上げざるを得ない状況。リメイク版が二番煎じのハンデを克服するためには、何か新しい工夫が必要だったと思います。