コクリコ坂から

今日は、家族でスタジオジブリの最新作「コクリコ坂から」を見てきた。

宮粼駿の脚本ではあるが、監督が「ゲド戦記(2006年)」の宮崎吾朗ということで、これまであまり食指が動かなかったのだが、まあ、他に見たい作品も無いからという消極的な理由により、公開日からかなり日数の経ってしまった本作を鑑賞することになった。

さて、内容は、1960年代初頭の横浜を舞台に、主人公である女子高生の海の学校生活と初恋の行方を描いているのだが、登場人物は大人も子供も気持ちの良い好人物ばかり。特に、彼女が通う高校の生徒たちは全員が明朗活発で規律正しく、知能レベルも相当に高そう。勿論、陰湿なイジメの雰囲気なんかは微塵も感じられない。

また、高度成長期に入って間もない頃の日本社会は活気に溢れており、男も女も、お互いに助け合いながら自らの夢に向かって一直線に歩んでいる様子は見ていてとても心地よく、95分間という上映時間がとても短く感じられる。

“コクリコ”の意味や主人公が友人から“メル”と呼ばれる理由、また彼女が毎朝旗竿に揚げる信号旗の通信内容等については、最後まで説明がなかったように思うが、まあ、ストーリー自体はとても分かりやすく、最近の宮崎作品のように見終わってから頭を悩ませられるようなところは何一つ無かった。

で、作品の満足度はというと、これがせいぜい“まあまあ”といったところであり、宮崎吾朗の監督作品としてならまだしも、宮粼駿が脚本を担当した作品としては相当に物足りない。正直、公害や貧困の臭いが感じられない1960年代というのは俺にとっては全くの夢物語であり、毒のない薄〜い内容のファンタジーを見せられたような印象が残った。

また、主人公と初恋の相手とは少なくとも1年間以上同じ学校に通っていたにもかかわらず、まるでこの映画の冒頭シーンで初めて出会ったかのように描かれているのはとても不自然であり、まあ、そんなところも本作の“現実離れ”感を強くしているのだと思う。

ということで、相変わらず間の取り方が下手であり、動画的な魅力にも乏しいとあっては、わざわざ映画館まで足を運ぶまでもなく、DVDで見れば十分なレベルの作品。スタジオジブリも、そろそろこれまでの作家主義的なやり方を見直す時期に来ているのではないでしょうか。