武士の家計簿

今日は、明日が試験だという娘を自宅に残し、妻のリクエストで「武士の家計簿」を見に行ってきた。

歴史家の書いたノンフィクション作品がベースになっているということで、昔の家計簿から下級武士の日々の生活を再現するセミ・ドキュメンタリイみたいな作品を期待していたのだが、実際は幕末を生きた誠実な“御算用者”猪山直之を主人公にした家族ドラマになっており、ノンフィクション的な雰囲気はほとんど感じられない。

膨れ上がった猪山家の借金を返済するため、直之が家中の家財を売り払うというエピソードが前半のヤマ場になる訳であるが、その後の窮乏生活の描写が相当に緩く、いたって普通であるため、なかなか笑うに笑えない。この程度では、昨今のリストラ家庭が見たらとても窮乏生活とは思えないんじゃなかろうか。

実をいうと、今回一番面白かったのは、この作品を鑑賞した映画館内の雰囲気。予想していたよりも随分と混んでいたのだが、そのほとんどが普段はあまり映画館に足を向けないような中高年の方々であり、上映中に携帯電話の着信音が鳴ったり、なかなか咳が止まらない方がいらしたりと、いつもとはちょっと異なる状況下での映画鑑賞となった。

ということで、帰宅後、留守番をしていた娘にこの映画館内の雰囲気を報告したところ、自分たちだって立派な中高年ではないかという誠に御尤もな指摘を頂いてしまった。まあ、それはそのとおりなのだが、今後も若者たちの顰蹙を買うような中高年にだけはならないよう、鋭意努力して参りたいと思います。