アメリカを売った男

2007年作品
監督 ビリー・レイ 出演 クリス・クーパーライアン・フィリップ
(あらすじ)
FBI訓練捜査官のエリック・オニール(ライアン・フィリップ)は、ある日、上司のケイト・バロウズに呼び出され、新たに創設された情報保護部に着任するロバート・ハンセン(クリス・クーパー)の補佐役を命じられる。実はハンセンには性的倒錯の疑いがあり、オニールは彼を監視してその動向を逐一バロウズに報告しなければならないのだが、重要とは思えないその任務にオニールはあまり気乗りがしなかった….


2001年に発覚した実在のFBI捜査官ロバート・ハンセンを巡るスパイ事件の映画化。

ハンセンは、対ロシアの情報戦略を専門とするベテラン捜査官であり、有能でコンピューターシステムにも精通している。確かに、少々とっつきにくい性格ではあるが、敬虔なカトリック信者でもあり、そんな彼に次第に好感を抱くようになったオニールは、自分の任務の不毛さバロウズに訴えるのだが、そこで彼女からその任務の“本当の意味”を告げられる。

ここからオニールv.s.ハンセンによる狐と狸の化かし合いが始まる訳であるが、どうやらハンセンは若造のオニールをほぼ完全に信用してしまったらしく、オニールの圧倒的優位さはほとんど揺るがない。ラストでどんなどんでん返しが用意されているのか注意しながら見ていたのだが、最後までさほど意外な展開も無く、当初からの予定どおりハンセンが逮捕されて映画は終わる。

まあ、有名な実話の映画化ということで、起こってもいないエピソードを面白おかしく挿入したりする訳にもいかなかったのだろうが、正直、娯楽作品として楽しむにはかなり地味な内容であり、一方、ハンセンの内面に関する描写が乏しいので、国家を裏切った男の心の葛藤を描く人間ドラマとして鑑賞するのもなかなか難しい。

監督のビリー・レイは脚本家の出身らしいのだが、同じビリーでも、ビリー・ワイルダーなんかと比べると相当真面目な人らしく、その奇をてらわない誠実そうな映画作りには好感が持てるのだが、まあ、主演を務めるクリス・クーパーのクセのある演技にかなり助けられているような印象も受けた。

ということで、FBIの捜査官というと、何かそれだけでスーパーマンのようなイメージがあったのだが、本作に登場する捜査官の皆さんはそれぞれに孤独な内面を抱える普通の人たちだった。スパイ映画を期待するとちょっと不満が残る可能性が高いが、そういう人々を描いた映画なんだと思って見れば、決して悪い作品ではないのでしょう。