安達太良山

今日は、秋の恒例となった妻との紅葉見物ということで、福島県安達太良山を歩いてきた。

この山は、“あだたらエクスプレス”という6人乗りのゴンドラを利用すれば、八合目に相当する薬師岳の頂上まで10分足らずで行けるため、上り坂を苦手とする妻にはもってこいの場所。紅葉シーズンには何と朝の6時30分からゴンドラの営業が開始されているというので、午前6時ちょっと前にゴンドラ山麓駅がある奥岳登山口の駐車場に到着。

早朝にもかかわらず、駐車場には既に30台くらいの車が止まっており、我々も素早く身支度を整えて山麓駅へと向かう。しかし、その途中に3名の係員の方が立っており、彼等の説明によると、現在、強風のためゴンドラは動いておらず、運行開始の見込みも立っていないとのこと!

迂闊にも、ゴンドラが動かないという事態は全く想定していなかったが、いつ動き出すか分からないゴンドラをボーっと待っている訳にもいかない。持参した地形図を取り出して妻と協議した結果、最短の五葉松平経由で行けばゴンドラ山頂駅のある薬師岳山頂まで1時間30分くらいだろうということで、自力で山頂を目指すことに決定。6時10分に山麓駅を出発する。

まずはスキー場の右手につけられた砂利道を歩いた後、勢至平方面へ向かうコースとの分岐(6時26分)を左折してゲレンデ内の斜面を進んでいくのだが、急遽決まった本格的な山歩き(?)ということで無理は禁物。原則、後ろから来た方々には先に行っていただき、こっちはゆっくりとマイペースで上っていく。

ゲレンデの最上部からは結構急な山道が続いており、しばらくすると安達太良山のなだらかな斜面が赤や黄色の紅葉に美しく染められているのが見て取れるようになる。さらに進んで次第に傾斜が緩やかになってくると、ルートは快適な尾根歩きへと変わっていき、7時19分に五葉松平到着。地名の由来になった背丈の低い松の緑が周囲の紅葉に絶妙な彩りを添えている。

ほぼ予定どおりの7時35分に着いた薬師岳の山頂からは美しい紅葉の様子を一望することが出来るが、写真を撮っていると帽子が吹き飛ばされてしまうほど風が強く、依然としてゴンドラは動いていないらしい。妻に確認したところ、スタミナはまだ十分残っているということなので、ここからさらに1時間半かかる安達太良山へと向かうことにする。

しばらく木道の上を歩いた後、仙女平分岐(8時11分)を過ぎたあたりからは少々歩き辛いガレ場のようなルートを進んでいく。傾斜はそれ程でもないので、晴れていれば周囲の景色を楽しみながら歩けるのかもしれないが、今日は次第にガスが濃くなっていき、視界はどんどん悪化していく。

そんな中、立ち込めるガスの向こうに安達太良山の山頂と思しき巨大な岩場のシルエットが見えてくるが、これがかなりの急斜面を上らなければならないようであり、内心ちょっとだけビビる。しかし、その麓の“安達太良山頂”の標識(8時56分)のあるところまで来てみると、その巨大な岩場というのは俺の目の錯覚だったらしく、実際はほんの4、5mくらいしかないことが分かる。

その岩場を攀じ登って、9時丁度に山頂(1699.6m)にある石の祠に到着。岩場を下りたところで腹ごしらえをしようと思ったのだが、相変わらず風は強く、周囲はガスに包まれて見晴らしがないということで、早々に下山に取り掛かる。小雨がパラつき始める中を少々足早に下っていくと、擦れ違う登山客が次第に多くなっていき、子供の姿も目立つようになる。

中の一人に尋ねると、既にゴンドラは動き出しているとのことで、今日の夕方から別の用事が入っている故、ちょっと帰りの時間を気にしていた我々にとっては朗報なのだが、それにしてもゴンドラを使って上って来る登山客の多さは半端ではなく、狭い山道では延々と続く行列と擦れ違うだけでも容易なことではない。

それでも、仙女平分岐(9時50分)付近まで来ると道幅は徐々に広くなっていき、10時20分にようやくゴンドラ山頂駅に到着。そこからはゴンドラに乗ってアッという間に山麓駅まで降りてきた。

ということで、相当ゆっくり上ったつもりだったが、それでもゴンドラ山麓駅から山頂まで3時間かかっておらず、改めて“ゆっくりと、しかし、休まずに”走法(?)の正しさが立証された結果となった。また、妻にとっては、ロープウェイ等を使わずに自力で登った初の日本百名山ということになり、これで上り坂にも少しは自信がついたかもしれません。