二度目の富士山

昨日と今日とで、御殿場口から富士山に登ってきた。

“富士山を二度登るのは馬鹿”ということらしいのだが、俺のような初心者でも夜間比較的安全に登れるという意味ではとても貴重な山であり、特に昨年登ったときはあまり天候に恵まれなかった上、安全第一を考えていろいろと“我慢”したため、個人的には富士山の魅力を満喫したとはいえないちょっと中途半端な気分。

そこで今回は、満天の星空を眺めながらのんびりと山頂を目指すというプランを立て、4つあるメジャーなルートの中から一番距離のある御殿場口を選択。標準コースタイムは7時間30分とのことであるが、昨年の河口湖ルートが3時間半だったことを考慮すれば、まあ、6時間もあれば登れるだろうということで、日の出(=午前4時58分頃)の30分前に登頂するため、前日の午後10時30分に出発することにした。

さて、数日前までは天気予報も上々だったのだが、予定日が近づくに連れ、曇りや霧といった予報が現れるようになり、少々の不安を抱えながら、昨日の午後5時過ぎに御殿場口の駐車場に到着。空いているという事前情報のとおり、止まっている車は10数台といったところで、問題なく駐車することが出来た。

ちょっと早い夕食をとった後、車内で仮眠しようとしたが、まだ時刻が早いためなかなか寝付けない。暗くなってからも車の出入りや人の話し声、さらには小雨のパラつく音等が気になって、一睡も出来ないまま時間だけが過ぎていく。午後10時に車外に出てみると、意外にも車の数は倍以上に増えていたが、この人たちもこれから登るつもりなのだろうか?

霧のかかった状態で星は全く見えないが、とりあえず雨は降っていないということで、ほぼ予定どおり10時37分に駐車場を出発。山頂で天の川を眺めるため、折りたたみイスと重い双眼鏡等でパンパンになったザックを背負い、10時40分に登山口入り口の鳥居を潜る。

すると、駐車場とは異なり、真っ暗な登山道ではヘッドライトの光が霧によって拡散してしまう感じで視界は最悪。幸い、ルートの両側に白いロープが張られており、これを頼りに最初の目的地である大石茶屋(10時48分)に着くが、ロープが張ってあったのはここまでで、大石茶屋の先にある下山道との分岐の先にはルートの目印になるものは何も無い。

持参したGPSと予想外に多い先行者のライトの明かりから進むべき大まかな方角は分かるものの、視界が悪いため登山道とそうでない部分との見分けがつかず、ジグザグになっているという登山道を正確に辿るのは全く不可能。所々に設置されている反射板付きの標識は近くまで行かないと発見できず、体力を無駄に消耗するのは承知の上で登山道とは思えない深い砂の上を進んでいく。

悪戦苦闘すること1時間余り、ようやく次の目的地である次郎坊(11時56分)に到着するが、ここまでの間、焦り気味で歩いてきたため、ペース配分は無茶苦茶。大量の汗をかいたせいで水の消費量もいつもよりかなり多い。しかし、ふと気がつくと空に星が輝いているのが見えるようになり、有難いことにようやく霧が晴れてきたらしい。

歩き始めてちょうど2時間くらいのところで腰を下ろし、ウィダーインゼリーを食べながら満天の星空を眺める。俺の衰えた視力のせいか、残念ながら天の川は確認できなかったものの、星の数はさすがに沢山見える。また、霧が晴れたお陰でルートが何とか識別できるようになり、ここから新六合目(午前1時43分)〜六合目(2時22分)へと進んでいく。

2時53分、最初の山小屋である日ノ出館に到着。この先から地面が硬くなって歩き易くなるものの、最初のペース配分のミスが祟り、スタミナ切れで思うようにペースが上がらない。さらに時々強烈な眠気が襲ってくるようになり、わらじ館(3時1分)〜砂走館(3時6分)を過ぎたあたりでさらにペースダウン。後ろから来た足早の2人組みに今日初めて追い越される。

3時38分に赤岩八合館に着くが、このペースでは予定していた6時間での登頂は到底無理であり、ご来光にも間に合いそうにない。しかも、何と8合目(3時59分)から上では次第に明るくなっていく地平線の一番明るいところが稜線の陰に隠れており、これでは途中でご来光を見ることも出来ない! 結局、日の出から3分遅れの5時1分に御殿場口の頂上に辿り着いたが、太陽のお姿を拝むことが出来たのは、そこから左手の富士宮口の方向へ移動してからだった。

予定どおりに登れなかったのは残念であるが、不思議なもので明るくなると眠気は何処へやら、気を取り直して昨年は雪のため中途挫折となったお鉢巡りに出発。今日の山頂は見事なほどの快晴であり、火口や周囲の雲海に浮かぶ山々の様子が良く見える。剣が峰の日本最高地点の碑(5時31分)は人が多かったため離れたところから写真に収めただけだったが、その少し先では雲海に映る影富士の姿がきれいに見えた。

河口湖口頂上の人込みを掻き分けて御殿場口の頂上(6時15分)に戻ってくると、ここで下山に備えて腹ごしらえをした後、山靴の上からスパッツをつけて再出発。7合目までは来た道を引き返し、日ノ出館(7時24分)の先から、いよいよ大砂走りが始まる。

最初のほうは道幅も狭く、大きめの石がゴロゴロしていたりするのだが、宝永山が見えるようになると幅も広がってくる。まあ、結構疲れていた上、もともと下りは苦手なのであまりスピードは出せなかったが、目の前に広がる雲海に向かって斜面を駆け下りていくのはなかなか爽快な気分。

その大砂走りも次郎坊(7時58分)までで終わり、そこから先は砂の上に付けられたブル道を歩き、大石茶屋(8時29分)〜登山口の鳥居(8時34分)と辿り、8時38分に駐車場まで戻ってくることが出来た。

ということで、夜を徹してのほぼ10時間の山歩きはボリューム満点。結局、折りたたみイスや重い双眼鏡の出番は無くなってしまい、計画立案上、反省すべき点も多いが、まあ、それも今後のための経験ということで、いつか6時間の壁にもう一度チャレンジしてみたいと思います。