2002年作品
監督 カーティス・ハンソン 出演 エミネム、キム・ベイシンガー
（あらすじ）
Ｂ-ラビットの愛称を持つジミー（エミネム）は、プロのラッパーとして成功することを夢見ながら、昼間はデトロイトのプレス工場で働いている貧乏青年。ある夜、ヒップホップ・クラブ「シェルター」で行われている“バトル”に出場するが、白人の彼は観客からの激しいブーイングに合い、一言も発せないまま敗退。母親のステファニー（キム・ベイシンガー）が若い恋人と一緒に住んでいるトレイラー・ハウスに転がり込む....
ヒップホップ界のスーパースター、エミネムの半自伝的作品。
“バトル”というのは、ヒップホップのリズムに乗せてお互いに相手の悪口を言い合う、公開の口ゲンカ大会みたいなもの。通常、初対面の相手と罵り合う訳だから、内容は即興的なものにならざるを得ず、主にボキャブラリーの豊富さや韻を踏むテクニックによって評価され、会場に詰め掛けた観客の反応で勝敗が決められる。
当然、相手の攻撃の揚げ足を取ることができる後攻の方が有利となり、本作のクライマックスとなるバトル大会でも、ジミーは後攻で１、２回戦を連破。最後のチャンピオン戦では、ルールによって彼が先攻になってしまうのだが、巧妙な作戦によって相手の攻撃の芽を摘み取ってしまい、チャンピオンを絶句させることにより見事完封勝ちを収める。
おそらく、このバトルの本当の魅力を理解できるのは英語を母国語としている方々だけなんだろうが、カーティス・ハンソンの的確な演出のお陰で、熱気だけは十分に伝わってくる。また、主人公のジミーが、多数派である黒人からの差別や迫害に屈することなく、試練に誠実かつ果敢に立ち向かっていく姿はとてもカッコ良い。
まあ、難を言えばちょっとカッコ良すぎるところが玉に瑕で、間抜けな友人や幼い妹を思いやるシーンが繰り返し登場したり、敵対する黒人グループにボコボコにされたときの顔の痣までが魅力的というのはちょっとやり過ぎ。自分の“半自伝的作品”でこういったキャラを演じられるというのは、このエミネムという人、相当ナルシスティックな方らしい。
ということで、舞台となるデトロイトのスラム街の荒廃ぶりは凄まじく、何故か、遠からず訪れるかもしれないわが国の未来の姿を見ているような気がしてきた。しかし、そんな劣悪な環境にあっても若者は様々な金のかからない遊びを発明し、そんな中からヒップホップという新しい文化が生まれてきた訳であり、まあ、あまり悲観する必要はないのかもしれません。
