ホフマン物語

1951年作品
監督 マイケル・パウエルエメリック・プレスバーガー 出演 ロバート・ランスビル、モイラ・シアラー
(あらすじ)
恋人でバレリーナのステラ(モイラ・シアラー)が出演するオペラを観賞していた詩人のホフマン(ロバート・ランスビル)は、舞台の幕間に一人でルターの酒場へとやって来る。そこで飲み仲間に請われた彼は、陽気なクラインザックの唄を披露した後、オランピアジュリエッタ、アントニアという3人の娘との間に芽生えた過去の悲しい恋の物語を、オペラそっちのけで語り始める….


ジャック・オッフェンバック作による同名のオペラの映画化。

この3人の娘は、ステラが持っている真の芸術家(オランピア)、娼婦(ジュリエッタ)、やさしい娘(アントニア)という3つの心に対応しているということで、プロローグに引き続き、この3つの恋の物語が順番に紹介されていく。しかし、いずれの話しにも決まって彼の恋路を邪魔する悪魔的キャラが登場し、結局、ホフマンの恋は成就することがない。

3つとも幻想的な色彩の強いエピソードばかりでなかなか興味深いのだが、オペラという制約上、普通のドラマに比較すると状況説明がどうしても不足気味になってしまい、一度見ただけで内容を完全に理解するのは結構難しい。あらかじめ、おおよそのストーリーを理解した上で、歌や踊り、そしてマイケル・パウエルならではの美しい映像を余裕を持って楽しむというのが、本作の正しい観賞方法なんだと思う。

そんな意味でも、ストーリーが比較的単純な最初のエピソードが俺の一番のお気に入りであり、ホフマンが恋してしまう自動人形のオランピアに扮したモイラ・シアラー(二役)によるバレエの魅力を堪能することが出来る。山岸凉子のバレエ漫画に時々登場する“コッペリア”って、これのことだったんだなあ。

一方、ストーリー的に一番面白そうなのは最後のアントニアのエピソードなのだが、この複雑な内容をオペラの一幕に押し込むのは少々無茶であり、これは独立した一本のドラマとして製作した方が良かったような気がした。

ということで、映像は美しく内容も格調高いのだが、あまりにもきちんとまとめ過ぎてしまったせいで臨場感に欠けるのが物足りない。これでは、全くといって良いほどオペラの素養がない俺が少々退屈してしまったのも致し方ないところです。