1973年作品
監督 ジャン・シャポー 出演 アラン・ドロン、シモーヌ・シニョレ
(あらすじ)
雪に閉ざされたフランスの片田舎オートドーフで殺人事件が発生し、捜査に当たるために予審判事のラルシェ(アラン・ドロン)が派遣される。彼は、殺人のあった現場付近で農場を経営する一家に疑いの目を向けるが、そこの女主人のローズ(シモーヌ・シニョレ)は、父親から遺された農場を夫や息子たちと一緒に守り続けてきたというオートドーフでも評判の人であった….
印象的な題名とシモーヌ・シニョレの名前に惹かれて見てみたフランス映画。
オートドーフ自体、昔からの伝統を大切にしている人々がひっそりと暮らしている町であり、地元の警察官が“この町に殺人を犯すような人物は一人もいない”というようなところ。中でも、ローズはそんなオートドーフの象徴として尊敬されている人物なのだが、ラルシェは自らの直感を信じ、周囲の反対を押し切る形で彼女の一家に対する捜査を進めていく。
彼の捜査の過程で、次男のポールが妻(ミュー・ミュー)と一緒に都会へ出たがっていることや、夫のピエールが(ローズの言うような)レジスタンスの元英雄ではなかったらしいこと等、事件とは直接関係のない事実が次々に明らかになっていく訳であるが、ようやく終盤になって長男ルイのアリバイが出鱈目だったことが判明! 遂に犯人逮捕かと思われたそのときにラルシェあて本部からの一報が入り、何と真犯人は彼らとは全く別の人物であったことが明らかになる!!
いや、こういうふうに書いていると、何かとても面白い作品だったような気がしてくるのだが、残念ながら実際にこれを見ている間の印象は全くの別物。脚本がヘタなため、ローズ一家の家族構成を理解するのに手間取ってイライラするし、ラルシェがどんな思いを持って捜査に当たったのかも解らず仕舞いで、ラストシーンの彼は間抜けにしか見えない。
しかし、本作の最大の問題は、監督のジャン・シャポーがオートドーフの伝統的な生活の良さを全く理解できていない点であり、本作中、それを表現するようなシーンはほとんど出てこない。そのため、観客は伝統を守ることに必死なローズの生き方に共感することが出来ず、彼女が単なる時代遅れの頑固婆になってしまっている。
ということで、ローズ役のシモーヌ・シニョレは流石の貫禄であったが、ポールやルイといった重要な脇役が大根揃いでは彼女の熱演もカラ回り。“燃えつきた納屋”という思わせぶりな題名もローズ一家の経営する農場の名前というだけで、火災シーンは一度も登場しませんでした。