カムイ外伝

白土三平の忍者漫画は俺の大好物であり、あまり気の進まなそうな妻と娘をやや強引に誘って、昨日封切りされたばかりの「カムイ外伝」を見に行ってきた。

実は、昨今のワイヤーアクションやCGを駆使すれば素晴らしい忍者映画が撮れるハズ、というのは俺がここ数年想い続けていた願いであり、それがようやく実現するということでもう最初から期待値は最高レベル。監督の崔洋一の作品はまだ見たことは無いが、ベテランであり、確か「月はどっちに出ている(1993年)」では高い評価を受けていた。共演が小雪伊藤英明というのが心配であるが、まあ、贅沢ばかりも言っていられない。

で、この期待は、開始早々の小雪扮するスガルのアクションシーンを見て不安へと変わって行く。続く、松ケンの変移抜刀霞切りは分身の術になってしまっているものの、まあ、止むを得ないかなあというレベルでちょっと気を取り直すが、その直後の猿飛の術のCGは唖然とするほどの出来の悪さであり、ここから先はストーリーも含めて一気に絶望レベルへと突き進む。

終わってみれば、隣に座っていた娘と思わず“辛かったねえ”と顔を見合わせてしまうような作品であり、妻でさえ“脚本が悪いんじゃないの?”と言いだす始末。いや〜、決して熱心な映画ファンとは言えない妻が、脚本の出来を口にするなんてことは前代未聞の出来事であり、このことを宮藤官九郎に教えてあげたいくらい。

まあ、唯一の救いは、松ケンの立ち姿や走るシーンに、一瞬、カムイの姿がダブったところであり、いつものことながらこういった彼の地道な努力ぶりには頭が下がる。でもね、残念ながら主役一人だけがどんなに頑張っても、他のスタッフがダメでは面白い映画は撮れないのであり、彼はもう少し出る作品を選んだほうが良いと思う。

ということで、スガルの千本の凄惨な美しさ、変移抜刀霞切りにおける髪の毛一本の緊迫感、そして飯綱落としの凄まじいまでの破壊力といった白土漫画の醍醐味が全く描けておらず、これでよく「カムイ外伝」を映画化しようとしたもんだと呆れ果てるばかり。今後、我が国の名作漫画を実写化するときは、ウォシャウスキー兄弟かギレルモ・デル・トロあたりにお願いした方が良いような気がします。