深夜復讐便

1949年作品
監督 ジュールス・ダッシン 出演 リチャード・コンテ、ヴァレンティナ・コルテーゼ
(あらすじ)
久しぶりに家に帰ってきたニック(リチャード・コンテ)は、父親が果物仲買人のフィグリアに騙され、金ばかりか両足までも失ってしまったことを知る。怒ったニックは、フィグリアと話を付けるため、なけなしの金で大量のリンゴを仕入れ、サンフランシスコの青果市場へと向かうが、そこでは謎の女リカ(ヴァレンティナ・コルテーゼ)が彼に近づいてくる….


ジュールス・ダッシンが「街の野獣(1950年)」の前年に公開した作品。

不思議な邦題は、父親の復讐に燃えるニックが、サンフランシスコの青果市場まで36時間かけて大量のリンゴを積んだトラックを走らせる、というところに由来したもので、原題は「Thieves' Highway」。

この原題のとおり、登場人物はみんなひと癖ありそうなキャラばかりであり、ニックの相棒になるエド(=ミラード・ミッチェルという役者がやっているんだけど、これがなかなかの名演です。)は純朴そうなリンゴ農家の一家を平気で騙そうとするし、彼等の上前をはねようとしてハイエナのように付け回す二人組もとても胡散臭い。

しかし、ニックが事故でトラックの下に挟まれてしまったとき、エドは当たり前のように救い出してくれるし、ニックが最後にフィグリア(リー・J・コップ!)と対決するときには、ハイエナの二人組も彼の力になってくれる。(これとは反対に、ニックのフィアンセだった女性は、彼がリンゴの代金をフィグリアに奪われてしまったことを知ると、怒って一人で出て行ってしまう。)

まあ、そんな具合に“人間の持つ二面性”みたいなものが本作の主要なテーマになっている訳であるが、いずれにしてもちょっと表現が露骨であり、また、ニックをはじめとする登場人物の行動があまりに不用意だったりするところが散見されるなど、脚本のアラも目立つ。

ということで、決してつまらなくはないものの、名作と呼ぶのにはちょっと躊躇われる出来の作品ではあるが、唯一、エドが運転していたトラックを急斜面で横転させてしまい、爆発炎上するトラックの背景で大量のリンゴが斜面一帯にバラ撒かれるシーンの映像は素晴らしく、ここは間違いなく一見の価値があると思います。