竹内好「日本のアジア主義」精読

昔から竹内好には興味はあったんだけど、俺の中国コンプレックスが邪魔をしてなかなか彼の著作を読む気になれず、ようやくこの歳になって彼の入門書的なつもりで本書を読んでみた。

しかし、この「日本のアジア主義」という論文自体、1963年に筑摩書房から出版された「現代日本思想大系 第9巻アジア主義」の解説として書かれたものということで、ここでは竹内自身の考えはあまり積極的には述べられておらず、彼の入門書としてはあまり適当な選択ではなかったようだ。

まあ、そうはいっても、戦前のアジア主義との関連で、これまであまり知る機会のなかった「右翼」の方々の考えに触れることができたのは貴重な体験であり、正直、彼等のアジア主義の“理念”には(福沢諭吉脱亜入欧論よりも)共感できるところが少なくなかった。

ということで、著者の松本健一は、本書の最後のところで現代のアジア主義に関する少々ロマンチックな空想を述べており、俺としてもそれには全く異論は無いところであるが、オリンピックがソウルや北京で開催されてしまった現在、“西洋的なもの”を変えるだけの力が本当にアジアに残されているのか、大いに疑問と言わざるを得ないでしょう。