巨人たち

再び本棚のサルベージ。

今回はル・クレジオの初期の代表作で、本の奥付をみると「1976.3.10 発行」となっている。確か、この頃に筒井康隆がこの作家のことを紹介していたのを何かで読んだことがきっかけで購入したのだと思う。

中身は、小説というよりも“とてつもなくなが〜い詩”みたいな内容で、コラージュ等の手法を駆使しながら情報化の進んだ現代社会の閉塞感、疎外感を描いている(んだろうと思う)。俺のような年寄りは作者の思い描くイメージについていけない部分が多く、読むのにとっても苦労したところであるが、まあ、こういう作品って全体から受ける印象みたいなものを大事にすればいいんだろうと自分を納得させながら、なんとか読了することができた。

まあ、この作品のテーマ自体は、発表当時にしてもそう斬新なものではなかったと思うが、それから30年余の時間が経過し、「マトリックス(1999年)」みたいな作品が娯楽映画として大ヒットしてしまう昨今の感覚からすると、取り立てて評価すべきという必要性は感じられない。

むしろ、この作品の重要性は、その表現方法というか、こういった物語らしからぬものを作品として発表してしまうこと自体にあるような印象を受けたが、その重要性が現在でも通用するものなのかどうかは、残念ながら俺にはサッパリ判らなかった。

ということで、確か筒井は後日「虚人たち」という作品を書いていたと思うが、読んだことがないのでそれが本作のパロディなのかどうか判らない。せっかくなんで、今度はそっちを読んでみようと思う。