パッチギ! LOVE & PEACE

2007年作品
監督 井筒和幸 出演 井坂俊哉中村ゆり
(あらすじ)
あれから6年。一人息子のチャンスの難病を治すため、アンソン一家は東京に引っ越してくる。しかし、チャンスに最先端の治療を受けさせるためには渡米する必要があり、アンソン(井坂俊哉)はその費用を得るために違法な仕事に手を染める。一方、妹のキョンジャ(中村ゆり)は弱小芸能プロダクションにスカウトされ芸能界に入るが、自分が在日であることを隠さなければならないことに疑問を持つ….


前に見た「パッチギ!(2004年)」の続編。

ストーリーは、難病に苦しむ一人息子を救うために奮闘するアンソンパートと芸能界に入ることによって在日という閉じた社会の殻を破ろうとするキョンジャパートに大別され、そこに彼等の父親に関する太平洋戦争当時のエピソードがフラッシュバック的に挿入されるという形で進んでいく。ただ、ちょっと脚本が荒いせいか、この3つのパートが上手く融合していないような印象を受ける。

この中で一番時間が割かれているのはアンソンパートなんだけど、実はこっちには明確なオチがつけられておらず、作品全体のクライマックスはキョンジャパートのほうで訪れる。しかし、そのクライマックスに繋がるテーマが明らかになるのは相当後半の方になってからであり、ここに至ってようやくキョンジャパートと父親パートとが結びつくのだが、全体の構成からするとちょっと遅すぎだと思う。

もっと早い時期に彼等の父親が徴兵拒否者、すなわち当時の日本側から見れば“裏切り者”であったという事実を観客に示しておき、何故そうなったのかを父親パートで説明するっていう構造を最初から明らかにしておけば、見ている方でもこの作品のテーマが一層理解し易かったんじゃないかなあ。そして、もしそのために必要なんであれば、子供が不治の病っていう設定とか取って付けたような乱闘シーンは無しにしても良かったと思う。

ということで、残念ながら前作の水準には達しておらず、そのせいかネット上ではこの作品に対する酷評が目立つ。まあ、題材が題材なだけに、前作のようにそれへの反発を抑え込んでしまう程のパワーがないとこんなことになってしまうんだろうけど、実際のところはそんなに酷い作品ではない。作品評の多くで“在日に甘すぎる”という主張が目立つが、多数が少数に対して公平さを主張する場合、その妥当性の判断に当たってはもうちょっと慎重になった方が良いだろう。

ところで、新キョンジャに扮した中村ゆりは、エリカ様に比べると線は細いもののなかなかの美人。彼女自身も在日なんだそうであるが、そのことで今後演じる役柄が限定されてしまうんじゃないかちょっと心配です。陰ながら応援しますんで、どうか頑張ってください。