父親たちの星条旗

2006年作品
監督 クリント・イーストウッド 出演 ライアン・フィリップジェシー・ブラッドフォード
(あらすじ)
太平洋戦争末期。日本軍との激戦を繰り広げた硫黄島で撮られた一枚の写真が米国内で評判となり、そこに映っていた兵士たちのうちドク(ライアン・フィリップ)、レイニー(ジェシー・ブラッドフォード)、アイラの3人に帰国命令が下される。英雄となった彼等を、軍が戦時国債の販売促進キャンペーンの目玉として利用するためだ。しかし、その写真が撮られた背景にはある秘密があり、それを知っている彼らは素直に喜ぶことができない….


クリント・イーストウッドが、太平洋戦争中の硫黄島をテーマに連続して発表した2作品のうちの一作目。ジョン・ウェインが主演した「硫黄島の砂(1949年作品)」みたいに硫黄島での戦闘を中心に描いているのかと思ったら、擂鉢山の頂上に星条旗を掲げようとしている瞬間を捉えたあの有名な写真を巡るウラ話し(?)のほうに相当のウェイトが置かれていた。

その写真にヤラセ疑惑があることは昔なんかの話で聞いたことがあったが、あれが撮られた後にさらに激しい戦闘が続き、写真に写っている6人のうちの3人までがそこで戦死していることは知らなかった。で、この映画で英雄として扱われるのはその生き残った方の3人であり、その内訳は衛生兵に伝令係、それにネイティブ・アメリカン

いや、彼らだって戦場で必死に自分の役割を果たした訳であるが、死んでいった戦友たちの記憶はまだ生々しく、そのへんを曖昧なままにして自分たちだけが英雄扱いされることには疑問を抱かざるを得ない。そして、そんな彼等の感情を無視して、戦時国債の販促に利用しようとする軍上層部への不信感は高まるばかり。

映画は、硫黄島での戦闘シーン、戦時国債の販促シーンそして終戦後の後日談の3つのパートが切り替えられながら進行していく訳だが、やはり目立つのは硫黄島での戦闘シーン。CGの助けを大幅に借りているんだろうが、とてもリアルで迫力もある。幸いにも、懸念されていた残酷シーンは思ったよりも控えめであり、数か所を除き、目をそむけることなく見続けることができた。

正直、クリント・イーストウッドの監督作品とはあまり相性は良くないんだが、この作品はそう悪くない。続編の「硫黄島からの手紙」も見てみることにしよう。