2003年作品
監督 ニキ・カーロ 出演 ケイシャ・キャッスル・ヒューズ、ラウィリ・パラテーン
(あらすじ)
ニュージーランドの海辺の村に住むコロ(ラウィリ・パラテーン)は、マオリ族の族長。彼は、寂れていく村の再生の願いを託すため、自分の後継ぎとなる男子の孫が生まれることを切望していたが、生まれてきた双子のうち男の子のほうは死産。女の子の方はパイケア(ケイシャ・キャッスル・ヒューズ)と名付けられて元気に育つが、女子を後継ぎにすることはできず、結局、村の男の子たちの中から後継者を選ぶことになった….
原題は「Whale Rider」で、パイケアたちはクジラに乗ってこの地にやってきた伝説の勇者の末裔という設定。
族長のコロには息子が二人いるんだけど、ともに彼のお眼鏡にはかなわなかったらしく、やむなく孫の代に希望を託したものの、生まれてきたのは女の子。ということで、物語は彼等、“期待ハズレの人々”の生き方が重要なテーマとなって進んでいく。おそらく、コロ自身、自分に伝説の勇者の末裔としての資質が欠けていることは十分自覚している筈であり、その意味では彼も“期待ハズレの人々”の一人なのだろう。
元々、パイケアというのはその伝説の勇者の名前であり、本当なら族長の後継者に付けられるべき名前。それを、コロの長男がコロへの当てつけみたいな感じで自分の娘に付けてしまった訳であるが、名付けられた方のプレッシャーは相当なもの。彼女はマオリ族の伝統を受け継ぐために懸命に努力するんだが、女の子を後継者にするなんて考えがまるっきりないコロにとっては全くの逆効果で、両者の溝は深まるばかり。そんなパイケアが、学校の学習発表会で自分の信条を涙ながらに訴えるシーンは結構感動的です。
ところが、何とその晩、海岸にたくさんのクジラが打ち上げられるという事件が勃発。そして、このクジラたちをパイケアが超自然的なパワーで救うことによって、実は彼女がWhale Riderだったってことが判明し、ラストでは、和解した彼女とコロを中心に村人たち総出で新しい未来に立ち向かっていくっていう感じで終わる。
うーん、確かにこれってハッピーエンドなんだろうけど、これでは物語の大半を費やしてきた“期待ハズレの人々”の話がどっかに行っちゃったんじゃないのかなあ。できれば超自然的なパワーは無しの方向で最後までいって欲しかったし、そのほうがもっと素直な感動を期待できたと思うだけに、ちょっと残念でした。
ニュージーランドの映画ということで、出演者のほうは全員知らない人ばかり。主演のケイシャ・キャッスル・ヒューズはマオリ族の人らしいが、ちょっと困ったような表情がなかなか可愛らしい。でも、この手の子役って、大人になると急速に魅力を失っていく可能性が高く、まあ、何とか頑張っていただきたいもんです。