第七天国

1927年作品
監督 フランク・ボーゼージ 出演 ジャネット・ゲイナーチャールズ・ファーレル
(あらすじ)
パリに住む下水掃除人のシーコオ(チャールズ・ファーレル)は、ひょんなことから姉に虐待されていた貧しい娘ディアナ(ジャネット・ゲイナー)を助ける羽目に。しかし、彼女は姉の密告で警察に連行されそうになり、とっさにシーコウは「彼女は僕の妻だ」と嘘を言ってしまう。そしてその嘘が警察にバレるのを恐れた彼は、彼女を自分の住まいである屋根裏部屋に連れて行く….


久々のサイレント作品。パリが舞台になっているが、れっきとしたハリウッド作品で第1回アカデミー賞の監督賞受賞作とのことです。

第七天国というのは、アパートの7階にあるシーコウの屋根裏部屋のこと。エレベーターのない時代には、今と違って上階のほうが家賃が安かったんだろうね。

この部屋でシーコオとディアナの二人だけの生活が始まる訳だが、理想が高いのと奥手なのとが邪魔をして、シーコオ君はなかなかディアナちゃんに手を出そうとしない。で、ある日、いきなりウェディング・ドレスなんかを買ってきて初めて愛の告白をするんだけれど、まさにその時、ドイツとの戦争が勃発! シーコオはその場で二人きりの結婚式を挙げ、あっという間に出征してしまう。

このへんの展開の唐突さはいかにもサイレントっぽいんだけど、その後の戦争のシーンは結構お金がかかっている。元々は舞台劇なんだそうで、話しの前半は屋根裏部屋を中心に話しが進むんだが、戦場シーンでは大勢のエキストラに戦車や火炎放射器まで登場して、俄に大作の雰囲気が漂ってくる。流石、アカデミー賞!って感じです。

ラストはちょっとしたドンデン返しがあって一応ハッピーエンドになるんだが、やっぱりちょっと強引かなあ。話しのキーポイントになるロザリオは、ドンデン返しのほうの小道具に使って欲しかったし、あれなら単純なハッピーエンドにしてくれたほうがむしろ良かったかもね。

とはいっても、ジャネット・ゲイナーがとても可愛いこともあって、全体的には十分に満足のいく作品。特にウェディング・ドレスを着て屋根裏部屋の窓から入ってくる彼女は、まさに第七天国に舞い降りた天使そのものです。次は、彼女のミュージカル物を見てみることにしよう。

ところで、この作品はIVCの「淀川長治のクラシック名作映画」で見たんだけど、このシリーズは放っておくといきなり淀川さんの解説が始まり、話しのネタをバラしてしまうので注意が必要。前に「群衆(1941年)」を見たときに痛い目にあった。

で、今回は解説部分をちゃんとスキップしておき、本編を見終わってから見たんだけど、相変わらず(?)作品の細部で淀川さんが勘違いしている点が多いね。昔、TBSラジオでやっていた「私の映画の部屋」のときもそうだったんだが、後で作品を見てみるとアレッと思うことが何回かあった。ただ、淀川さんの場合、実際のストーリーよりも彼の間違った記憶のほうが面白かったりするんだよね。恐るべし>淀川先生