宝石泥棒

山田正紀は、デビュー当時、「神狩り」、「弥勒戦争」、「謀殺のメロディー」等々で楽しませて頂いたが、代表作の一つといわれる本作は読んだことがなかった。(だって、題名が悪いよねぇ。)

で、今回読んでみて思ったんだけど、これは諸星大二郎の世界だよね。「あとがき」で本人はブライアン・W.オールディスの名作「地球の長い午後」の影響があったことを告白しており、確かに第1部を中心に色々とヘンテコな生き物が出て来るんだけど、アミガサダケとかツナワタリなんかに比べると相当アイデア的に負けていると思う。

むしろ、例の“視肉”も含め、第2部以降は諸星作品の影響が色濃いように思え、特に第3部の乾ききった砂漠の中の街やそこに住む人々なんかは、正に諸星ワールドそのものでしょう。俺は読みながら諸星作品に出て来る“ちょっと怒ったような顔の人々”のイメージが頭から離れなかった。

まぁ、本人は認めたくないのかもしれないが、俺は両方とも嫌いではないので、山田正紀の描くヒーローが諸星ワールドの中で活躍する様は、読んでいてとてもおもしろかった。できれば、この小説を原作にして諸星がマンガを描いてくれないかなぁ。

で、いつものように謎は完全には説明されないまま物語は終わってしまい、巻末の山岸真の解説によるとこの余韻が素晴らしいそうなのだが、凡人の俺には正直ちょっと物足りない。やっぱり扉の向こうに何があったのか知りたいし、もし“余韻”で勝負するなら、せめて「百億の昼と千億の夜」くらいのレベルでお願いしたいっていうのは、ちょっと欲張りすぎか?