武甲山

今日は、埼玉県の秩父地方にある武甲山を歩いてきた。

映画ばっかり見ている間に周囲はすっかり春めいてしまい、そろそろ標高1000mを超える山を歩いてみたい。そこで選んだのが日本二百名山の一つにも数えられているこの山であり、“秩父の盟主”の異名に相応しからぬ痛々しいお姿(=石灰石採取のために北半分が大きく削られている。)を横目で睨みながら、午前5時半過ぎに一の鳥居駐車場に着く。

身支度を整えて5時43分に出発。簡易舗装された林道のようなところを進んでいくとシラジクボ分岐(6時00分)のちょっと先に登山口(6時3分)があり、“武甲山 約1時間40分”の標識が立っている。ここから山道になるがルートは依然として明瞭であり、道端には“○丁目”という標石が立っているので道迷いの心配は全く無用。

不動滝(6時10分)のところには“トイレ用の水をペットボトルに入れて運んで欲しい”旨の看板が立っているが、肝心のペットボトルが見当たらないので協力のしようがない。それにしても、今日は久しぶりの山歩きということでなかなか歩くペースが掴めない感じであり、いつもに比べて遅いのか速いのかわからないまま6時37分に大杉の広場。そこには山頂まで“あと60分”の看板が立っていた。

さて、道端の標石はどこまでもずっと続いており、(山頂が52丁目ということで)その数字を2倍して10で割ったものがおおよその“合目”に相当することが分かってからはとても良い目印になる。稜線上の分岐(7時10分)を右折したところにあるトイレはまだ閉鎖中であり、不動滝のところにペットボトルが置かれていなかった理由もこれで納得。

山頂付近にある御嶽神社(7時11分)はとても立派なお社であり、その裏手を上って行ったところに武甲山山頂(1304m、7時14分)の標識が立っている。ここからは秩父市街地の様子が一望できるのだが、そのすぐ先は石灰石の掘削によって出来た断崖になっているため山頂周辺は厳重なフェンスで立入りが制限されている。

隣の岩場の方が標識のある場所よりも明らかに高いのだが、そこへの立入りは禁止されているので諦めるしかない。仕方がないので7時20分に先程の稜線上の分岐まで引き返し、今度はここを直進して小持山〜大持山へと続くプチ縦走路に入るが、いきなりの急降下はやや想定外であり、鞍部を意味すると思われるシラジクボ(7時36分)まで下りてきてホッと一息。

そこには“小持山 急な登り坂約50分”の表示があったが、しばらくの間はほぼ平坦な尾根歩きであり、上りがキツくなってきたところで後ろを振り返ると自然なままの無傷な武甲山の姿が目に入る。その先を上り続け、小持山(1273m)には8時9分に着くことが出来た。

少々疲れてはきたものの、事前学習によるとその先にある小ピーク(8時29分)からのほうが眺めは良いらしいので、そこまで頑張って本日最初の大休止。あまり広い場所ではないので混雑するときには避けた方が良いのだろうが、平日の今日は他の登山者の通行の妨げになる心配も無い。倒木に腰を掛け、持参したポットのお湯で入れたコーヒーを飲みながらゆっくり疲れを癒やす。

次の目的地である大持山はそこから目と鼻の先であり、再出発(8時39分)後、間もなく山頂(1294.1m。8時49分)に着いてしまう。とりあえず休養は十分なのでそのまま歩き続け、稜線上の分岐を左に入って妻坂峠を目指すが、延々と続く下り坂はちょっと大変であり、正直、妻坂峠(9時29分)に着いたときにはちょっぴりバテていた。

しかし、時間的な余裕は十分であり、ここで2杯目のコーヒーを飲み終えてから“急な登り坂約50分”の表示がある武川岳を目指す。予想したとおりペースは全然上がらないが、急ぐ必要は無いので小休止を挟みながらゆっくり歩き続け、10時8分に山頂(1051.7m)到着。地味なピークだろうとの予想に反し、立派な標識の他にベンチまで整備されていた。

俺のすぐ後に反対側から上ってきた若者が隣のベンチに腰を下ろしたので、どこまで行くのか尋ねてみたところ“二子山まで”とのお答え。俺が今日歩いているコースも以前に歩いたことがあるそうであり、やはり妻坂峠までの長い下りが印象に残っているとのことだった。

さて、ここが本日の最終目的地であり、妻坂峠(10時29分)まで引き返した後は再び緩やかな下り斜面を歩き続け、林道(10時48分)を横切って10時55分に駐車場まで戻ってくる。本日の総歩行距離は12.6kmであり、予想ではもっと楽に一周できるはずだったのだが、やはり鈍った体は正直だった。

ということで、途中でバテてしまったのは情けないが、まあ、何とか予定どおり歩くことが出来たのでこれで良しとしておこう。しかし、この状態では重いテント泊装備を背負っての山歩きは難しそうなので、夏山までの間に徐々に体力を回復させていく必要がありそうです。

 ブルックリン

2015年作品
監督 ジョン・クローリー 出演 シアーシャ・ローナンエモリー・コーエン
(あらすじ)
アイルランドの田舎町エニスコーシーで母や姉と幸せに暮らしていたエイリシュ(シアーシャ・ローナン)。しかし、不景気なアイルランドではちゃんとした職業に就くことは出来ず、そんな妹を心配した姉ローズの勧めもあって、単身アメリカに渡ることを決意する。過酷な船旅の末、ようやくブルックリンでの新生活を始めたエイリシュだったが、慣れない環境とホームシックに苦しめられた彼女は…


第88回アカデミー賞で作品賞、脚色賞、主演女優賞の3部門にノミネートされた作品。

物語は1950年代のアイルランドの田舎町エニスコーシーから始まるのだが、そこでは女性の社会進出なんてマダマダといった状況であり、幸せになるためには資産家のドラ息子を見つけて結婚することが一番の早道。しかし、シアーシャ・ローナン扮するエイリシュは(何と!)男子に相手にされない地味〜な女の子という設定であり、まあ、そんなところが彼女のアメリカ行きを決心させた理由の一つだったんだろう。

ところが、ブルックリンでの新生活を通じて自信に満ちあふれた魅力的な女性へと生まれ変わったエイリシュが、姉ローズの突然の死を契機に故郷のエニスコーシーに一時帰国してみると彼女を取り巻く状況は一変。昔は見向きもしてくれなかった資産家の息子であるジム君からデートに誘われるわ、姉の後任として簿記の仕事に就くことはできるわで、独りぼっちになってしまった彼女の母親も大喜び。

まあ、観ている方からすればシアーシャ・ローナンは最初から美人なので、いまひとつピンとこないところもあるのだが、とにかくエイリシュの心はブルックリンに残してきた“夫”であるイタリア移民の配管工トニー君(エモリー・コーエン)と金持ちで教養もあるジム君との間で大きく揺れ動くことになる。

で、迷いに迷った挙げ句、最後の決め手になるのがエニスコーシーの社会に内在する保守性・閉鎖性と移民の彼女を温かく迎えてくれたブルックリンの寛容さとの違いであり、正気を取り戻した彼女はトニー君の元へ戻って無事ハッピーエンド。反トランプ色の強かった今年のアカデミー賞なら作品賞くらい穫っていたかもしれないなあ。

ということで、映像は綺麗だし、ストーリーも面白いということでなかなかの佳作に仕上がっているのだが、やはり最大の魅力は主役のシアーシャ・ローナン。あの「つぐない(2007年)」に出ていた頑な少女がこんな素敵な女性に成長していたのはちょっとした驚異(?)であり、彼女の今後の動向から目を離すことは出来ません。