大佐飛山

今日は、今の時期、一部で大人気の大佐飛山を歩いてきた。

藪に覆われたこの山の山頂まで行けるのは、一般的に3月末から4月下旬までの残雪期に限られるのだが、噂に聞く“雪の天空回廊”は何としても青空の下で見てみたいということで、日毎に変化する天気予報を眺めながら一喜一憂。ここのところ曇りや雨のマークばかりだったのだが、幸運にも今日だけは晴れのマークが付いており、予報がハズレないことを祈りながら午前4時ちょっと前に巻川林道上の駐車スペースに到着する。

みんな考えていることは同じらしく、ハシゴの設置された“新登山口”の前には既に10台くらいの車が止まっており、俺も駐車スペースを確保してから身支度を調える。その間にも県外ナンバーの車が到着する等、今日の大佐飛山は大人気の予感であり、暗闇の中での準備に少々手間取ったものの、4時21分にヘッドライトを点けて出発する。

ハシゴの先はいきなりの急登であり、しかも所々異様にスベリやすい斜面に苦労させられるが、設置されていたロープに助けられて4時47分に稜線に出る。間もなく周囲が明るくなってきたのでヘッドライトを消して歩いて行くと、次第に傾斜が増していき、それを上りきったところが三石山(1257m。5時8分)。

まだ雪の量は少ないのでアイゼンを付けずに歩いていくが、寒さのせいで雪の表面は堅くなっており、けっこうスベリやすそう。サル山(1467m。5時42分)の手前で雪庇が狭くなっていたため、左手の笹藪に分け入ってしばらくは夏道を進むが、再び雪が現れるともう限界であり、山藤山(1588m。6時7分)の山名板の下で12本爪アイゼンを装着する。

黒滝山(1754.1m)まではそれなりの急斜面であるが、アイゼンを付けてしまえば何のことはなく、6時47分に山頂に着く。いよいよここから先が本番ということで、軽く腹拵えを済ませてから樹林帯の中へ入っていくと、所々に目印が付けられているおかげで比較的迷うことなく尾根の乗換えに成功し、7時9分に西村山(1775m)到着。

上空には文句のつけようのない青空が広がっており、ここから先は見晴らしの良いところが増えてくるせいもあってテンションは急上昇。大長山(1866m)の山頂手前で緩んだアイゼンのベルトを締め直していると、早くも下山してくる男性と出会い、彼の話によるとこの先にいる登山者は全部で6人くらいとのこと。

大長山の山頂(7時52分)を過ぎると周囲の見晴らしは一気に広がり、これまでPCのディスプレイ上でしか見たことのなかった“雪の天空回廊”が目の前に現れる。目指す大佐飛山(1908m)までのルートも一望することが出来るので、もう道迷い等の心配は無用であり、幸せな気持ちを噛み締めながら回廊の上を歩いて行く。

さて、大長山の先、一人追い越した後に下山者一人とすれ違ったので、山頂にいると思われる登山者はあと4人。ちょっとニギヤカかなあと思いながら進んでいくと、山頂のすぐ手前で下山してくる4人組に遭遇し、情報が正しければこれから上にはもう誰もいないハズ。8時41分、ひっそりと静まりかえった大佐飛山の山頂に着くことが出来た。

事前学習のとおり山頂からの見晴らしは無いので、少し先の那須岳が眺められるところまで移動して大休止。カップヌードルにスティックコーヒーという定番のメニューで空腹を満たしていると、次の登山者が到着したようなので9時10分に山頂を後にする。

ここまで予定したペースを随分と上回っているため、復路はのんびりと風景を楽しみながら歩くことにするが、西村山までの間、これから山頂を目指す多くの老若男女とすれ違うことになるため深山の雰囲気は希薄。“栃木で一番遠い山”というキャッチフレーズは、この時期の大佐飛山には似つかわしくないような気がする。

その後は、往路で辿ったはずの黒滝山山頂への踏み跡が見つけられずに藪の中を迷走したり、シャーベットと化した雪にアイゼンが効かずに1mくらいのプチ滑落を経験したりしながら楽しく来た道を引き返し、12時48分に駐車地まで戻ってきた。総歩行距離は18kmだった。

再出発(9時10分)〜大長山(10時1分)〜西村山(10時32分)〜黒滝山(10時51分)〜山藤山(11時21分)〜サル山(11時44分)〜三石山(12時16分)〜巻川林道分岐(12時33分)〜駐車地(12時48分)

ということで、5年前の無雪期に黒滝山まで“下見”に出掛けたときには現実味に乏しかった大佐飛山挑戦も、その後の経験の積み重ねのおかげで無事クリアすることが出来た。次の機会があれば、今度は光徳寺を起点にして歩きたいと思うので、そのときのためにいくつか気付いた点をメモしておこうと思います

1 好天に恵まれたこともあり、復路は長袖のシャツ二枚だけで歩いた。風が強いと状況は一変するのだろうが、冬山のような装備までは不要だと思う。ワカンも使わなかったが、まあ、あまり重くないのでファッション代わりに持参するのは可。

2 昼食用のお湯以外に500mlのペットボトルを5本用意したが、消費したのは往路1本、復路2本の合計3本。予備を考慮しても2リットルで十分だろう。

3 山頂は樹林帯の中にあるパターンが多いのだが、その手前の上空が開けたところではスマホが繋がる。黒滝山の手前と大長山の先で自宅に途中経過をメールしたが、いずれも成功だった。