バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)

今日は、妻と一緒に「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」に見に行ってきた。

これまでアレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ監督の作品を見たことはないのだが、予告編で見た“ちょっとヒネったスーパーヒーロー物”的な雰囲気は俺の好みにピッタリだし、何といっても今年のアカデミー賞で作品賞、監督賞を含む四冠を獲得した作品を見逃す訳にはいかないということで、あまり気乗りしなさそうな妻を急かして映画館へ向かう。

さて、“ちょっとヒネったスーパーヒーロー物”という俺の予想は85%くらい外れており、実際は、落ち目の映画俳優であるリーガンがブロードウェイの舞台に再起をかけるというなかなか渋めのストーリー。バードマンというのは、彼が数十年前に大ヒットを飛ばしたヒーロー映画シリーズの主人公の名前であり、最後の賭でもあるブロードウェイ挑戦に失敗するかもしれないという不安に押し潰されそうになったとき、“悪魔の囁き”で彼を勇気づけてくれる。

要するに、バードマンは主人公の妄想(≒心の支え)であり、いよいよオープンの前日、彼が舞台の失敗を確信したときには姿まで現して励ましてくれるのだが、結局、彼に出来たのは舞台上で自殺してみせることだけ。まあ、これではあまりに後味が悪いということで、ラストにはハッピーエンド風のエピローグが付け加えられているのだが、空を見上げた彼の娘の瞳に映っていたのは、(バードマンではなく)名優となったブリーフ一枚の父親の姿だったのだろう。

ということで、予想とは異なる内容であったが、リーガン役のマイケル・キートンの演技は最高に可笑しいし、脇を固めるエドワード・ノートンエマ・ストーンも良かったので、まあ、結果オーライといったところ。話題の“偽装長回し”も面白かったが、個人的にはアントニオ・サンチェズというジャズドラマーによるドラムだけのBGMの方が印象的でした。