早月尾根から剱岳(1日目)

今日は、かねてからの“憧れ”であった北アルプス剱岳に出発する日。

3年前の常念岳以降、俺の“歩いてみたい山リスト(日本アルプス編)”に掲載された山々は着実に踏破されていき、最後に残ったのがこの剱岳。人気の高いのは“カニの縦ばい”や“横ばい”で有名な別山尾根ルートであるが、登山口のある室堂に行くまでがなかなか大変そうであり、ここはむしろ観光目的で妻と一緒に訪れてみたい雰囲気。

もう一つのメジャールートである早月尾根は、登山口まで車で入れるものの、自宅からの予想走行距離は400kmを越え、正直、こんなロングドライブはこれまで経験したことがない。しかし、事前学習によると駐車スペースの確保は比較的容易らしく、何度か休憩を挟みながら運転すれば何とかなるかということで、通常より遅い午前6時頃に登山口のある馬場島荘に到着。

さて、馬場島荘の駐車場は予想どおり満車だったが、そこから200mくらい手前にある駐車場の方はまだガラガラであり、そちらに車を止めて6時11分に出発。途中、キャンプ場にあるきれいなトイレをお借りして、有名な“試練と憧れ”の石碑(6時24分)の右手にある登山口から山道に入る。

階段状に整備されたルートは間もなく平坦になり、6時55分に標高1000mのプレートを通過するが、今日はテント場のある早月小屋までの予定なので時間的余裕は十分あり、バテないように他の登山者のペースに合わせてゆっくり進んでいく。休憩も疲れる前に取ることを心掛け、1200m(7時29分)の先にある1400m(7時56分)のプレートのところで1回目の小休止。

他にも数人の登山者が休んでいたが、その中に、この時刻から山頂までの日帰りを目指すという方が複数いらっしゃることを知って、ちょっと吃驚。日帰りピストンは夜明け前に出発するものだとばかり思っていたため、今回は迷うことなくテント泊を選択した訳であるが、下山が日没後になる危険性を厭わなければ遅出の日帰りも有りなんだなあ。

まあ、非力な俺の場合、日帰りピストンとテント用具を早月小屋まで担ぎ上げるのとではどちらが大変か、俄に判断し難いところであるが、彼等との会話を通して、今日中に山頂を踏んでしまうという考えが頭をもたげてくる。最終的には、テント場到着時点での時刻、疲労度、天気の状況等を勘案して決めることになるのだが、当面、オーバーペースにならないように気を付けながら1600m(8時12分)〜1800m(8時43分)〜1920.7ピーク(9時2分)〜2000m(9時26分)〜池塘(9時40分)と進んでいく。

早月小屋のすぐ手前にある見晴らしの良い空き地(10時8分)のところで、先程、日帰りピストンの予定と言っていた単独行の登山者2名に追い付き、まだまだ遠い剱岳の姿を眺めながら作戦会議。たまたま近くにいたベテラン風の方に、このまま山頂を目指して問題ないか助言を求めたところ、“全然問題ない”という力強いお言葉を頂戴した。

早月小屋(10時11分)でテント場の受付をしたときにも、これから山頂まで行けるか管理人さんに尋ねたところ、“お客さんの腕(足?)次第だけど、まあ、大丈夫なんじゃないの”という回答であり、こうなったら躊躇う必要は無い。まだガラガラのテント場に素早くマイテントを設営し、アタック用ザックに必要な物だけを詰めて10時36分に再出発。

さて、重い荷物から解放された両足はまだまだ快調。2400m(10時58分)を越えると、一部登山道の崩壊しているところやガレたヤセ尾根等が出てくるが、周囲の素晴らしい景色を眺めながら歩けるので全く苦にはならない。2600m(11時30分)のプレートのところで日帰りピストンの登山者2名に三度追い付くが、もはや中途撤退はあり得ないということで、躊躇いの残る彼等を置いて先に進む。(結局、お一人は途中から下山したらしい。)

事前学習によると、2800m(12時18分)の先からが早月尾根の“核心部”であり、ここから山頂までの0.7kmが大変とのことであったが、正直、危険性を感じるような箇所は皆無であり、高度感の無いカニのハサミ(12時37分)は全くの評判倒れ。途中からマイペースの二人組の後を付いていったので息が上がるようなことも無く、別山尾根との合流地点(12時53分)を経て、13時丁度に剱岳の山頂(2999m)に着くことが出来た。

普段はそんなことはしないのだが、長年の憧れの山ということで、他の登山者の方に祠の前で記念写真を撮っていただき、それを娘にLINEで送付したりしながら30分弱の休憩を取る。山頂からの360°眺めは素晴らしく、7月末に歩いた白馬岳の特徴的な山容もしっかり確認することが出来た。

再出発後は、別山尾根との合流地点(13時28分)〜2800m(13時54分)と来た道を引き返すが、急ぐ必要は無いことに気が付いて2600m(14時27分)のプレートのところで再び大休止。その後も、写真を撮ったりしながら意識的にのんびり歩き、テント場に戻ってきたのは15時半過ぎのことであった。

ということで、テント場はほどほどに混んでいたものの、プライバシーの保てる場所にテントを設営しておいたおかげで問題は皆無。半裸の状態(?)でのお昼寝を楽しんだ後、ラジオで天気予報を聞いていたら、今夜から明朝にかけて天気が崩れるとのことであり、今日のうちに山頂を踏んでおいたのは大正解と満足しながら眠りにつきました。