モーターサイクル・ダイアリーズ

2003年作品
監督 ウォルター・サレス 出演 ガエル・ガルシア・ベルナルロドリゴ・デ・ラ・セルナ
(あらすじ)
1952年、アルゼンチンのブエノスアイレス。23歳の医学生エルネスト・ゲバラガエル・ガルシア・ベルナル)は、7歳年上の友人アルベルト・グラナード(ロドリゴ・デ・ラ・セルナ)と二人、おんぼろバイクのポデローサ号に乗って南米大陸探検の旅に出る。途中、恋人のチチーナの実家に立ち寄ったエルネストは、彼女の求める“将来の約束”に応えることが出来ないまま旅を続けることに….


チェ・ゲバラが青年期に行ったオートバイによる南米旅行を題材にした作品。

その“旅行”というのは、まずブエノスアイレスからパタゴニアへ向かい、その後アンデス山脈を越えてチリに入った後、ペルーを経て、最後はベネズエラのカラカスを目指すという壮大なもの。こんな大冒険を、おんぼろバイクと貧弱な装備だけで実行しようとする彼等の計画は無謀というほかなく、出発早々、様々なトラブルに見舞われることになる。

しばらくの間は、“若さ”を武器にした主人公たちが、そんな数々の問題にもめげることなく旅を続ける様子が“青春ロードムービー”風に描かれるのだが、だましだまし走らせ続けてきたポデローサ号がついに鉄屑と化し、徒歩で旅を続けるようになると雰囲気は一転。社会の底辺で苦しむ多くの人々との出会いを通して、彼等が“連帯”の必要性に目覚めていく様子が淡々と描かれるようになる。

まあ、単体の作品として見た場合、旅を終えた二人が空港で別れるだけのラストシーンは、少々物足りなく感じられるのかもしれないが、スティーブン・ソダーバーグの「チェ 28歳の革命(2008年)」、「チェ 39歳 別れの手紙(2008年)」の前日譚として見ると、感動もひとしお。食事にありつくための嘘は平気でつくが、真面目な質問に対しては人一倍の誠意をもって答えようとする主人公の姿勢は、ベニチオ・デル・トロが演じた魅力的な革命家のイメージと比べても、全く違和感はなかった。

また、年上の友人であるアルベルトが主人公の引立て役に徹している様子もなかなか感動的であり、彼もまた人並みはずれて誠実な人間であったことが良く伝わってくる。実は、ラストで80歳を超えたアルベルト・グラナード本人の姿がちらっと映るのだが、彼は本作の制作現場にも実際に同行し、様々な助言を与えたらしい。

ということで、偉人の伝記映画というと、どうしても説教臭さが気になってしまうのだが、幸い、この“三部作”に限っては全くそのような心配は無用であり、とても爽やかな印象を残す作品に仕上げられている。もう一度、後の2作品を見直してみたくなりました。