今日は、我が国の最南端に位置する日本百名山である宮之浦岳を淀川登山口からのピストンで歩いてくる予定。
レンタカーを借りたのでバスの時刻等を気にする必要はないのだが、淀川登山口の駐車台数は相当限られているらしく、路上駐車になるのを避けるために午前4時20分に宿を出る。“南国”の故、日の出が早いというイメージがあったのだが、よく考えてみれば日の出時刻に影響するのは南北ではなくて東西であり、なかなか明るくならないなあとボヤきながらレンタカーで県道592号線を進んでいく。
しばらくすると先行車両に追い付いたので“シメシメ、この車に付いていけばあとは楽ちん!”と思ってスピードを落とすが、10分くらい走ったところで先を譲られてしまい再び単独走。まあ、道幅はだんだん狭くなっていくが、これくらいの林道なら何度も走った経験があり、たまにすれ違うタクシーに注意しながら5時10分頃に淀川登山口に着く。5台分しか確保されていない白線内の駐車スペースの空きは1台分だけであり、先程、先を譲ってもらったおかげで何とか路駐を避けることができた。
さて、山中ということもあってか周囲はまだ薄暗く、宿で用意してもらった弁当(=外注らしいが、決してうまくない。)を半分だけ食べて暇つぶし。そうこうしているうちにようやく明るくなってきたので5時33分に歩き出す。格好は革の登山靴にCW-Xという久しぶりの本格登山姿だが、内心はあくまでも観光気分であり、待ちに待ったせっかくの機会をバテで台無しにしないよう、意識的にスピードを控えめにして歩いていく。
周囲には(内地であれば)御神木クラスの杉の巨木が文字通り林立しており、それらが朝陽に照らされて輝いていく光景はちょっと神秘的。そんな人の手が付けられていない秘境のような光景に反して登山道は明確であり、500mくらいの間隔で設置されている標識もとても理解しやすい。こういった“管理された秘境”というのは俺の最も好むシチュエーションであり、うん、やっぱり来て良かったな。
さて、6時7分に着いた淀川小屋には、コロナ禍にもかかわらずそれなりの利用者がいるようであり、正直、この快晴下での縦走はちょっぴり羨ましい。小屋のお隣りにある橋を渡った先からはそれなりの上りが続くが、視界が広がってトーフ岩が眺められるようになると高盤岳展望所(6時59分)はもうすぐであり、ここからの眺めは文句なしに素晴らしい。
小花之江河(7時6分)~花之江河(7時14分)という二つの湿地に設置された木道上にはうっすら霜が付いており、周囲の冷気が汗ばみ始めた体をヒヤッとさせてくれる。7時27分に着いた黒味分れの標識には「この付近携帯電話利用可能」の表示があり、LINEを使って自宅に途中経過の報告。ここを左折すれば黒味岳に行けるが、まあ、とりあえずは本命の宮之浦岳を目指すことにしよう。
ややワイルド感の増した登山道は依然として明瞭であり、ちょっとした岩場を越えて平坦な巨石の上に立つ。おそらくこの周辺が投石平(7時50分)であり、そこからは無数の奇石が点在する素晴らしい景色を一望することができる。森林限界を超えたこともあってそこから先は絶景の連続であり、それぞれ頂上に奇石を戴く山々の向こうには広大な海が広がっている。
ルートはそんな山々の山頂を避けるようにして続いているのだが、ネット上に多くの写真が掲載されているロボット兵(8時36分)の先にある栗生岳(1867m)はその唯一の例外であり、8時53分に山頂を通過。その先にある小ピークを越えるとようやく宮之浦岳の姿を視認することが出来るようになり、本当に奥深いところにあるんだなあと思いながら9時5分にその山頂(1936m)に立つ!
九州地方の最高峰でもあるそこからの景色はまさに圧倒的であり、ギザギザの永田岳や遠く口永良部島の姿を認めることもできる。このような絶景を無風快晴のコンディションで眺めることができるのは無上の喜びであり、隣に妻の姿がないことだけが唯一の心残り。おそらく山小屋利用の縦走なら彼女にも歩けると思うが、まあ、問題はその気力が残っているかどうかだろう。
先客はお一人だけだったが、間もなく3人目の登山者が現れてしまい、なかなか山頂を独占するのは難しそう。仕方がないので4人目の登山者が上ってきたところで下山(9時23分)に取り掛かり、栗生岳(9時38分)~最終水場(9時53分。せっかくなので一口飲んでみた。)~投石平(10時33分)と往路を引き返す。途中、可愛らしいヤクシカにお会いすることも出来たが、本土の鹿とは異なり、人の姿を認めても走って逃げ去るようなことはない。
さて、10時58分に黒味分れまで戻ってくるが、まだ大して疲れてもいないのでそこにザックをデポして黒味岳に立ち寄ることにする。何度か急な岩場が出てくるが、そこには太くて黒い立派なロープが備え付けられており、それを使ってどんどん先へと進んでいく。上りが一段落すると一つ先の岩のピーク上に人影が認められ、どうやらそちらが黒味岳の山頂らしい。
最後は岩場をよじ登るのかと思ったが、ルートは回り込むようにして急登を避けており、さして苦労することもなく11時23分に黒味岳(1831m)の山頂に着く。他の山と同様、この山頂にも巨石が二つ並んでおり、より高いのは山名板が置かれていない方の石なのだが、そこには二人連れの先行者が大きく荷物を広げているためにちょっと近づきにくい雰囲気。
しかし、待っていても代わってもらえそうにない故、勇気を出してそちらの石に移動して山頂からの景色を写真に収める。男性の方から“邪魔ですか?”と聞かれたが、そうですねと答える訳にもいかず、大丈夫ですと口ごもりながら早々に山名板が置かれている方の石に戻る。後続者の姿は見えないので、その平らな石の上に大の字になってしばし休憩。
黒味分れまで戻ってきたのは11時59分のことであり、そこから先は花之江河(12時13分)~淀川小屋(13時12分)と歩いて13時46分に淀川登山口へ帰着。ここまでの総歩行距離は16.0kmだったが、予定していたよりちょっと早く戻ってこられたので、屋久杉自然館で明日の荒川登山口までのバス切符を購入してから島の西側にある大川の滝へと向かい、大迫力の滝の姿を眺めてから宿に戻った。
ということで、最高のコンデイション下で念願の宮之浦岳登頂を果たすことが出来、まずは大満足の一日。しばらくロングウォークから遠ざかっていたのでバテずに最後まで歩けるか少々心配していたが、まあ、何とか人並みのペースで歩いてこられるくらいの体力はまだ残っているらしい。明日の縄文杉トレッキングも無理のないペースで歩いてこようと思いながら早めに眠りに就きました。